ビヨルンは、生成AI(人工知能)が「大きな被害を引き起こす可能性がある」として、ミュージシャンへの影響を警告しました。国際作詞作曲家団体連盟(CISAC)が発表したレポートによると、2028年までにアーティストの収益の約5分の1がAIの影響で失われるリスクがあるとしています。
CISACの会長を務めるビヨルンは、「テクノロジー企業がアーティストの作品を無断で使用し、対価を支払わないのは非常に不公平だ」 と述べました。
*ABBA in 1979
ABBAの楽曲がAI企業に盗用される訴訟に言及
今年、ABBAの名曲がAIスタートアップ企業SunoとUdioにより盗用されたとして、レコード会社が訴訟を起こしました。この訴訟では、両社が著作権で保護された楽曲を不正に使用し、新しい曲を生成していると主張されました。問題となったのは、ABBAの「ダンシング・クイーン」に酷似した「Prancing Queen」という曲です。
一方、SunoとUdioはこの主張を否定し、「生成された楽曲は完全に新しいものであり、著作権法に基づくフェアユースに該当する」と反論しています。
ビヨルンは、クリエイターの権利を保護し、公正な報酬が支払われるようなAIの枠組みを整備するために、政策立案者が規制を導入することが重要だと訴えています。
レポートが示すAIによる経済的影響
CISACが発表したレポートによると、音楽や映像分野のクリエイターは、生成AIの影響で2028年までにそれぞれ収益の24%と21%を失うリスクがあるとしています。これにより、5年間で累積220億ユーロの損失に相当します。
一方、音楽や映像分野での生成AIの収益は、現在の3億ユーロから2028年には90億ユーロに増加すると予測されています。
CISACは、生成AIが「テクノロジー企業を豊かにする一方で、今後5年間で人間のクリエイターの収益を大幅に脅かす」と述べています。この収益は、クリエイターの作品を無許可で再現することから直接得られるものであり、「クリエイターからAI企業への経済的価値の移転を表している」と指摘しました。
映像分野では、吹き替えや字幕制作を担当する翻訳者やアダプターが最も影響を受け、収益の半分以上が危機にさらされる可能性があるとされています。この研究は、コンサルタント会社PMP Strategyによって実施されました。
ビヨルン、AIの創造的利用を支持
懸念を表明しつつも、ビヨルンは生成AIを創造的プロセスで使用することを支持しています。彼は、AIが音楽において「これまでにない最大の革命」をもたらす可能性があると述べました。
もし1970年代にAIが存在していたら、ABBAは歌詞の提案やモータウンのような他のスタイルを楽曲に加えるためにAIを活用していただろうと語っています。
また、AIは多くの業界で創造性と生産性を向上させる可能性を秘めているとしています。 ビヨルンとABBAのもう1人の主要な作詞作曲家であるベニーは、通常の「オフィスアワー」で働きながら、年間14曲ほどしか制作できなかったと回顧しました。
ビヨルンは、「最高のAIモデルは、アーティストを予想外の方向へ導くことができるだろう」と述べています。