ニューヨーク発 ―
『マンマ・ミーア!』は間違いなくブロードウェイ最大の“パーティー”だ。
スパンコールに輝くジャンプスーツをまとい、ABBAのヒット曲をぎっしり詰め込んだこのミュージカルは、観客を歌いながら劇場の外へと送り出す。
しかし、ステージ上の“ダンシング・クイーン”たちは、まるで「SOS」を歌っているような状態でもある。
「ショーの最後であの厚底靴を履いて歩くのは、本当に命がけですよ」とキャストのジム・ニューマンは笑いながら語る。
「平気そうに見せていますけど、いつ足首をひねってもおかしくないんです!」。
🏛️ ブロードウェイへ10年ぶりの帰還
『マンマ・ミーア!』は10年ぶりにブロードウェイへ帰ってきた。
かつての本拠地であるウィンター・ガーデン・シアターで、2026年2月1日までの期間限定公演として再演中だ。
このジュークボックス・ミュージカルは、ABBAの名曲およそ20曲を使って、若い女性ソフィ(演:エイミー・ウィーヴァー)と、彼女をギリシャの島で育てた母ドナ(演:クリスティーン・シェリル)の物語を描く。
結婚を控えながら父親を知らないソフィは、母の元恋人3人――サム(ヴィクター・ウォレス)、ビル(ニューマン)、ハリー(ロブ・マーネル)――を結婚式に招待し、自分の父親を見つけようとする。
そして、シェイクスピア喜劇さながらの騒動が巻き起こる……“ドット・ドット・ドット”(てん・てん・てん)。
*『マンマ・ミーア!』の出演者、ジム・ニューマン(左)、ヴィクター・ウォレス、ロブ・マーネルがニューヨークでポートレート撮影に応じている。
*上記画像をクリックすると動画に移行します。
🌞 初演から24年、笑顔と涙を届け続ける名作
『マンマ・ミーア!』が初めてニューヨークで幕を開けたのは、2001年。
それは9.11同時多発テロのわずか数週間後のことだった。
批評家や賞レースにはあまり評価されなかったものの、観客にとってこの作品は太陽のような癒しとなった。
母娘の関係に自分を重ね、ドナの親友ターニャ(ジャリン・スティール)やロージー(カーリー・サコロヴ)との友情に励まされた観客も多かった。
当時の観客は1970年代にABBAブームを体験した世代が中心だったが、
今ではZ世代にも人気が広がっている。
その理由は、TikTokやサブリナ・カーペンター、
そしてメリル・ストリープとアマンダ・セイフライドが出演した映画版『マンマ・ミーア!』の存在だ。
「若い子たちがこの音楽を全部知っているなんて、本当に不思議ですよ」とウォレスは語る。
「映画を通して覚えたんでしょうね。でも、この物語は誰にでも共感できる。
世代を超えて楽しめるショーだからこそ、これほど人気が続いているんです」。
*『マンマ・ミーア!』のフィナーレで、ターニャ(左:ジャリン・スティール)、ドナ(クリスティーン・シェリル)、ロージー(カーリー・サコロヴ)がついに「恋のウォータールー」に立ち向かう。
*上記画像をクリックすると動画に移行します。
💃 全米ツアーを経て、再びニューヨークへ
今回の『マンマ・ミーア!』カンパニーは、ニューヨーク入りする前に約2年間の全米ツアーを行なっていた。
25年にわたって世界各地で上演され続けてきたため、
キャストたちは「まだ観たい人がいるのか」と半信半疑だったという。
だが結果は――ほぼすべての公演が完売。
ブロードウェイ・リーグによると、2か月間で平均週160万ドル以上を売り上げる大ヒットになっている。
「最初はニューヨークの反応が少し怖かったです」とウォレス。
「ニューヨーカーは洗練されていて批評的な観客ですから。
でも、彼らもこの作品を求めていた。
“よく知っているもの”“心から楽しいもの”が欲しかったんです。
それが癒しになるんですよ」。
一方、ニューマンはこう続ける。
「正直、批評家にはもっと厳しく叩かれると思ってました。
だってツアーのセットそのまま持ってきたんですよ?
初演のときもあまり好意的じゃなかったですしね。
でも今回は受け入れてくれた。
この作品が“自分が何者なのか”“誰のためのショーなのか”を理解しているからだと思います」。
*ロブ・マーネル(左)、ヴィクター・ウォレス、ジム・ニューマンが、タイムズスクエアのウィンター・ガーデン・シアターの外に立っている。
🎭 ファンの声が原動力に
3人の“父親候補”を演じる俳優たちにとって、
ステージドアでファンから直接聞くエピソードは何よりの喜びだ。
「実際に、結婚式でお母さんが娘をエスコートする予定だという女性に会ったんですよ」とマーネルは笑う。
「まるで“リアル・ソフィ”でした!」。
ニューマンも続ける。
「この作品は高校でもよく上演されるんです。
『僕、ビル役をやりました!』って言う14歳の子にもよく会います。
僕が学生のころは『オクラホマ!』でしたけど、
今では『マンマ・ミーア!』が高校演劇の定番なんですよ。
『僕たちの公演の初日にお祝いメッセージ送ってください!』なんて頼まれることもあります(笑)」。
*リサ(左:レナ・オーウェンズ)、ソフィ(エイミー・ウィーヴァー)、アリ(ヘイリー・ライト)が、「ハニー、ハニー」の曲に合わせてドナの日記を熱心に読みふけっている。
☕ 舞台裏にも友情が
長いツアーを共に過ごしたキャストたちは、
舞台上だけでなく裏でも強い絆で結ばれている。
キャストとスタッフは毎週持ち寄りディナー(ポットラック)を開催し、
3人の“父親チーム”には専用のグループチャットもある。
「まるで兄弟みたいなんです」とマーネル。
「ニューマンとは楽屋を共有してるんですが、
壊れたエスプレッソマシンまで一緒に置いてるんですよ(笑)。
それでも仲がいい。お互いのことは何でも知ってます」。
「知りすぎですよ!」とニューマンがすかさず突っ込む。
「彼の背中を剃ってあげたこともありますからね!――これが見出しになったりして(笑)」。
🪩 “You can dance, you can jive, having the time of your life.”
――『マンマ・ミーア!』は今も、人生を楽しむすべての人に笑顔を届け続けている。
https://ca.news.yahoo.com/mamma-mia-bigger-ever-behind-120150413.html