一度だけ観る作品もあれば、人生が少し退屈に感じるたびに何度でも戻ってきたくなる作品もある。
ミュージカル『マンマ・ミーア!』はまさに後者であり、20年以上にわたってウェストエンドで、ABBA の抗いがたい楽曲とギリシャの島を舞台にしたドラマを、ロンドンで最高(かつ最も“キャンピー”な)ナイトアウトのひとつへと変えてきた。
物語の中心にいるのはドナ・シェリダン。かつて歌手として活動していた彼女は、ギリシャの島で小さなタベルナを営みながら、娘ソフィを育ててきた。
一見シンプルに進むはずだった結婚式の週──しかしソフィが自分の父親だと思われるドナの昔の恋人3人を招待したことで、過去と現在が突然ぶつかり合い、母娘とも予期せぬ展開へと突き進む。
この“衝突”が機能するのは、楽曲が物語に巧妙かつ魅力的に織り込まれ、ストーリーを語る仕掛けになっているからだ。
その結果、多くのクィア観客にとって特に親しみ深い作品となっている。ABBA の楽曲は何十年にもわたり、クラブ、バー、プライドイベント、ホームパーティーなどで生き続けてきたからだ。
物語そのものにも同じ魅力がある。
ドナの過去は複雑で、ソフィの計画は無謀、島にやって来た3人の男性たちは戸惑いながらも事態に身を任せる。
この混乱を“危機”として描くのではなく、ミュージカルは登場人物がオープンにそれを受け入れながら進んでいく姿を見せる。
そのため、大きな楽曲が“芝居がかった演出”ではなく、“そこに生きる真実”として響くのだ。
これこそが、この作品が今もクィア観客に深く訴えかけ続ける理由の一つでもある──混乱や間違い、過去の関係、新しい再出発に対して、“判断されない居場所”があるからだ。
この秋からの新カンパニーには、『マンマ・ミーア!』の世界を知り尽くしたキャストが揃う。
サラ・ポイザーは、英国国内・国際ツアー・ウェストエンドを通して 12 年以上ドナを演じており、2017~2019年のノヴェロ劇場での出演に続き再登板。
彼女に加わるのは、すでにロージーとして世界中をツアーしてきたニッキー・スウィフト。
また、リチャード・スタンディング、ダニエル・クラウダー、タムリン・ヘンダーソンは、いずれも UK および国際ツアーでそれぞれの役柄を演じてきた熟練キャストだ。
エリー・キングドンとジョージ・マディソンも、ツアーで同役を経験したソフィとスカイとして参加し、ケイト・グラハムは引き続きターニャを演じる。
さらに、これまでアンサンブルだったエマ・オデルが、一部公演でドナを演じることになった。
もしあなたがすでにサウンドトラックを隅々まで知っているなら、今回のパフォーマンスで新たなディテールを見つけられるだろう。
そして初めて観る人でも、『マンマ・ミーア!』がこれほど長く愛され続けてきた理由がすぐに分かるはずだ。
この楽しくて混沌とした世界が、さらに 25 年続きますように。
https://www.attitude.co.uk/culture/mamma-mia-london-best-west-end-musical-504274/




