『CHESS』は、これまでに数多くのバージョンが存在してきた。ティム・ライスと、ABBAのベニー・アンダーソン、ビヨルン・ウルヴァースによるこのミュージカルは、もともとコンセプト・アルバムとして制作され、1986年にロンドンのウエストエンドで開幕した。改訂版は1988年にブロードウェイで上演されたが、すぐにクローズしている。カルト的な人気はあるものの、それ以降ブロードウェイでのリバイバルは行なわれていない。
*ダニー・ストロング
(© トリシア・バロン)
『バフィー 〜恋する十字架〜』や『ギルモア・ガールズ』で俳優として知られ、さらに『ドープシック』や『Empire 成功の代償』で脚本家としても活躍するダニー・ストロングは、自身が「ブレヒト的な冷戦史劇」と呼ぶ『CHESS』が機能することを証明したいと考え、いままさにそれを実現している。
また、ブロードウェイ進出予定の新作ミュージカル『ガリレオ』の脚本も手がけたストロングは、TheaterManiaの取材に応じ、『CHESS』の新バージョン執筆について語った。
※このインタビューは、明確さのために要約・編集されている。
*ティム・ライス、ベニー・アンダーソン、ビヨルン・ウルヴァース、ダニー・ストロング
(© トリシア・バロン)
以前、あなたは『CHESS』の楽曲が何度も頭に浮かんだことが、このリバイバルをやりたいと思った理由だと話していました。音楽のどんなところが好きなのですか?
まず第一に、コンセプトが大好きです。ボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーによる冷戦時代のチェス対決を、フィクションとして描くというアイデアですね。僕はティム・ライスの大ファンで、『ジーザス・クライスト=スーパースター』や『エビータ』が大好きですし、『CHESS』もその流れにある作品だと感じています。そして僕はABBAの大ファンでもあります。
このスコアは、間違いなくダイナミックで、感情的で、力強い。でも同時に、とても幅が広い。オペラ的な楽曲もあれば、ABBAらしいポップ・ソングに感じられる曲もあり、さらには19世紀ロシアの哀歌のような響きもある。本当に素晴らしい音楽です。
第1幕では戦略兵器制限交渉(SALT)、第2幕ではエイブル・アーチャー核戦争危機と、歴史的出来事に焦点を当てています。なぜそれらを選んだのですか?
冷戦のプロットを作品に取り入れたいという思いは最初からありました。ただ、冷戦は何十年にも及ぶ出来事なので、どこから始めるべきかが問題でした。僕にとって冷戦の本質は、核兵器拡散の危険性にあります。それこそが、冷戦があのような形で戦われた理由だと思うからです。
そこから行き着いたのがSALT II条約でした。第1幕では、CHESSの試合が核兵器削減によって冷戦を解決しようとする試みと絡み合って描かれます。しかしSALT II条約は最終的に失敗します。では、その先に何が起こるのか。それが第2幕で描かれる危機、1983年のエイブル・アーチャー事件です。誤解によって、世界が核兵器による破滅寸前まで追い込まれた出来事ですね。
僕にとって冷戦の全体像を象徴する流れとして、とても自然に感じられました。また、エイブル・アーチャー事件が結果的に冷戦終結へとつながった、という見方もあります。その意味でも、冷戦の物語を締めくくる方法として魅力的でした。これ、たぶん初めて公に話したと思います。この作品に関わっている人たちにも、これまで説明したことがなかったかもしれません。
ここで扱われているテーマは決して楽しいものではありませんが、語り手やその余談などで観客を楽しませています。その語り口はどのように見つけたのですか?
基本的には、あれは僕自身の声なんです。だから見つけるのは難しくありませんでした。それに、その役を演じているブライス・ピンカムの要素もかなり入っています。僕たちのコメディ感覚はとても似ているので、その融合ですね。
ただ、最初からあそこまでコミカルにするつもりはありませんでした。長年にわたる『CHESS』の問題点は、物語があまりに大きく感じられて、観客が完全に感情移入しにくいところにありました。大きな笑いを狙ったわけではなかったのですが、ケネディ・センターで上演したときには予想外に大きな笑いが起きて、正直驚きました。
音楽そのものが、さまざまなトーンやスタイルが入り混じった“モッシュピット”のような構成なので、脚本も同じようにトーンを混在させるのは、音楽的なアプローチと整合性があると感じました。
*審判役のブライス・ピンカムと『CHESS』のキャスト
(© マシュー・マーフィー)
『CHESS』から少し離れて:『ギルモア・ガールズ』が25周年を迎えました。当時、これほど長く影響力を持つ作品になると想像していましたか?
まったく想像していませんでした。制作している当時から素晴らしい作品だとは思っていましたし、そのスタイリッシュさが大好きでした。当時はWBで放送されていたこともあり、若者向けの番組として見られていました。
でも、あれほど知的で、鋭い引用が多く、1930年代のスクリューボール・コメディのようなテンポの速い会話を持ちながら、同時にドラマティックで心を打つ作品は珍しかった。制作中は感銘を受けていましたが、これほど長く愛され続けるとは思っていませんでした。
他に復活させたいミュージカルはありますか?
僕が書いたオリジナル・ミュージカル『ガリレオ』があります。科学理論を教え広めようとして闘い続けたガリレオの人生を描いた作品です。とても現代的なテーマを持っています。2024年にバークレー・レパートリー・シアターで上演しましたし、ぜひブロードウェイに進出してほしいと願っています。いまは、舞台作品に集中しています。



