Mamma Mia!
会場:プレイハウス・シアター(※)
公演期間:2025年12月(火)~2026年1月4日(日)
レビュー:ソフィー・グッド(Sophie Good)
ABBAのジュークボックス・ミュージカル『マンマ・ミーア!』が、小さなギリシャの島からプレイハウス・シアターへと軽やかに踊り込み、クリスマス・シーズンから新年にかけて上演される。
25周年を迎え、これまでに世界で7,000万人以上を動員してきた『マンマ・ミーア!』は、ジュークボックス・ミュージカルの人気爆発を牽引し、そのスタンダードを確立した作品である。
*リディア・ハント(ソフィ役)と『マンマ・ミーア!』のキャスト一同。
写真:ブリンクホフ=モーゲンブルク
現在では定番となったこの形式の中で、『マンマ・ミーア!』を際立たせ、今なお最高峰の一本として保っている理由は、主に二つある。
ひとつ目は、単に音楽がABBAであるというだけでなく、ビヨルンとベニーというバンド本人たちが創作段階から深く関わっているという点だ。
その結果、ディスコ調の高揚感から失恋の物語、そしてその間にあるあらゆる感情まで、どんな場面にも当てはまる楽曲がそろい、物語に自然に組み込まれている。
二つ目は、きちんとした“物語”が存在することである。
キャサリン・ジョンソンによる脚本(初演演出:フィリダ・ロイド)は、私たちをギリシャの島へと導く。
そこでは、20歳という若さで結婚しようとしているソフィー(リディア・ハント)がいる。
父親に結婚式へ来てほしいものの、その正体が分からない彼女は、母ドナ(ジェン・グリフィン)には内緒で、父親候補と思われる3人の男性を結婚式に招待してしまう。
こうして、3人の男性がそろって“昔の恋人”に再会するという、クラシックな大騒動が始まる。
この作品の核心にあるのは、母と娘の関係であり、同時に長く続く女性同士の友情である。
ソフィとドナ、それぞれの親友たちが結婚式に駆けつけることで、その絆はより鮮明になる。
ドナとソフィの関係性こそが、観客が物語の行方を本気で気にかける理由となっている。
引き込まれ、真実味がある
ハントとグリフィンは、その重要性をしっかり理解している。
二人の演技は引き込まれるようで、真実味があり、演技力と歌唱力の両方を兼ね備えている。
とりわけグリフィン演じるドナは、「ザ・ウィナー」での胸を締めつけるような歌唱で、客席を完全に制圧する。
*サラ・アーンショウ(ターニャ役)、ジェン・グリフィン(ドナ役)、ロージー・グロソップ(ロージー役)。
写真:ブリンクホフ=モーゲンブルク
ドナの親友であるロージーとターニャを演じるロージー・グロソップとマリサ・ハリスも同様に素晴らしい。
グロソップが、父親候補のビル(楽しませてくれるマーク・ゴールドスロップ)に向かって「テイク・ア・チャンス」を歌いかける場面は、観客を大いに沸かせる。
一方、ハリスは裕福で威圧感のあるターニャ役に華やかさと力強さを与え、特に代表ナンバー「ダズ・ユア・マザー・ノウ」で強烈な存在感を放つ。
3人の女性が「ダンシング・クイーン」などで揃うと、ABBAオリジナル楽曲のディスコ感と楽しさが、見事に舞台上で蘇る。
女性の友情
本作は、まさに女性の友情の物語であり、男性キャラクターたちはやや影が薄い。
父親候補であるサム(ルーク・ヤシュタル)、ハリー(リチャード・ミーク)、そしてビル(ゴールドスロップ)は登場するものの、印象度は控えめだ。
映画版でのピアース・ブロスナン同様、ヤシュタルのサムは、役柄に求められる謎めいた魅力や声の幅にやや欠けている印象を受ける。
*マーク・ゴールドスロップ(ビル役)、ルーク・ヤシュタル(サム役)、リチャード・ミーク(ハリー役)。
写真:ブリンクホフ=モーゲンブルク
ソフィの恋人スカイを演じるジョー・グランディは、魅力的に見せようと努力しているが、役そのものがあまり書き込まれていないため、キャラクターに深みを与えきれない。
一方で、スタッグ・パーティー(独身最後の宴)でダイビング衣装に身を包んだ男性陣は非常に楽しい。
ペッパー役のジョセフ・ヴェラーと、エディ役のイーサン・ケイシー=クロージアは、「レイ・オール・ユア・ラヴ・オン・ミー」でアクロバティックかつエネルギッシュなパフォーマンスを披露する。
本作がやや苦戦するのは、登場人物同士の自然な会話や、説得力のあるやり取りを作る部分である。
多くの場面が短く、次の曲へのつなぎのように感じられることもあるが、印象的なヒット曲こそが、この作品の真骨頂である。
みんなで歌う大合唱
アンサンブル・ナンバーこそが本作のハイライトであり、ソフィが本当の父親を探す物語が、ディスコの名曲「ギミー!ギミー!ギミー!」に織り込まれていく。
ヘン・パーティー(女性側の宴)とスタッグ・パーティーがダンスフロアで交錯する場面こそ、魔法が起こる瞬間であり、誰もがその渦中に入りたくなる。
そしてもちろん、最後には盛大なシング・アロングが待っている。
キラキラのジャンプスーツを着た大人たちが、「恋のウォータールー」や「スーパー・トゥルーパー」を全力で歌い上げる、そのキャンプさ(大げさで楽しい雰囲気)を、誰もが心ゆくまで楽しめる。
お祭り気分かと言われれば、特別そうではない。
だが、家族みんなで楽しめる完全な現実逃避の時間か?
それは間違いなく「イエス」だ。
8歳のレビュアーが、ABBAの曲を大声で歌いながら劇場を後にしたか?
もちろん、その通りである。
『マンマ・ミーア!』は、最後まで観客を喜ばせ、足を自然に動かしてしまう、非常に完成度の高い娯楽作品であり続けている。
上演時間
2時間35分(休憩1回含む)
会場
エディンバラ・プレイハウス
18 – 22 Greenside Place, EH1 3AA
公演期間
2025年12月9日(火)~2026年1月4日(日)
開演時間
- 火~土、12月29日(月):19:30
- 木・土・日 マチネ:14:30
休演日
- 12月25日、31日、1月1日
追加マチネ
- 12月24日(※19:30公演なし)
- 12月30日
- 1月2日
チケット・詳細:Book here.
*ジョー・グランディ(スカイ役)と『マンマ・ミーア!』のキャスト一同。
写真:ブリンクホフ=モーゲンブルク
※プレイハウス・シアター(Edinburgh Playhouse)とは
プレイハウス・シアターは、スコットランド・エディンバラにある英国有数の大規模劇場で、ミュージカル、コンサート、コメディ、バレエなど幅広いジャンルの公演を開催する、同市を代表するエンターテインメント会場です。
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■ 基本情報
- 正式名称:Edinburgh Playhouse
- 所在地:18–22 Greenside Place, Edinburgh EH1 3AA
- 開場:1929年
- 客席数:約3,000席
- 運営:Ambassador Theatre Group(ATG)
■ 歴史と位置づけ
- 開場当初は映画館兼劇場としてスタート
- その後、ライブ・エンターテインメント専用劇場へ転換
- 現在は
- スコットランド最大級の劇場
- ロンドン・ウエストエンドや全英ツアー作品の
重要な上演拠点
として知られています
■ ミュージカルとの関係
プレイハウス・シアターは特に大型ミュージカルとの相性が良く、
- 『マンマ・ミーア!』
- 『ライオン・キング』
- 『ウィキッド』
- 『オペラ座の怪人』
- 『レ・ミゼラブル』
など、世界的ヒット作のツアー公演が頻繁に上演されます。
エディンバラ公演は
- クリスマス~年末年始
- 長期滞在公演
になることが多く、家族連れの観客にも人気です。
■ 劇場の特徴
- 天井が高く、奥行きのある壮麗なオーディトリアム
- 大規模セット・照明・オーケストラに対応可能
- バルコニー席・サークル席からも舞台が見やすい設計
- 音響が良く、歌唱中心のミュージカルに最適
■ 『マンマ・ミーア!』との相性
- 明るく開放感のある劇場空間
- 観客数が多く、カーテンコールの一体感が非常に強い
- フィナーレのシング・アロングが
特に盛り上がる会場として知られる
そのため、『マンマ・ミーア!』のような
観客参加型・祝祭感の強い作品にとって、理想的な劇場です。
■ ひとことで言うと
「スコットランドで“王道ミュージカル”を観るなら、まず名前が挙がる劇場」
ABBAファン、
そして『マンマ・ミーア!』ファンにとっては、
本場UKツアーの熱気を最もダイレクトに体感できる場所のひとつです。




