『マンマ・ミーア!』レビュー:楽しくてカオス、それゆえに欠点も忘れて夢中になれる、時に支離滅裂な旅
ロマンチック・コメディすべてに言えることですが、『マンマ・ミーア!』も好みが分かれる作品です。そして、2008年のこの映画版ミュージカルを観ようとする人は、最初から「何に飛び込むか」をわかっているはずです。
この映画は、エネルギーと幸福感にあふれ、1990年代後半に生まれたジュークボックス・ミュージカル(ABBAの楽曲を使った舞台)を原作としています。このミュージカルも、それに基づいた映画も、プロットの穴やキャラクター描写の弱さを、ABBAの音楽の力で補っていることは否定できません。
しかし、それでもなお観客は細かいことを気にせず、この物語が描く理想郷のような世界に身を委ねてしまうのです。
続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』では、前作で問題とされた映像や構成の一部は改善されています。しかし、それによって前作が持っていた温かさやきらめきがやや失われてしまった感があります。
魔法的リアリズムの要素が入り、シェイクスピア喜劇のような展開を見せる『マンマ・ミーア!』は、若きソフィが結婚式の前夜に、母の元恋人3人を招いて「本当の父親を突き止めようとする」という物語です。
スターが集結したキャストは、観客と同じようにこの作品を楽しんでいる
映画が始まってすぐに、観客は現実の感覚を脇に置き、世界に飛び込むよう促されます。そして、その扉を開いてくれるのが、若きソフィーを演じるアマンダ・セイフライドの魅力です。
彼女は映画史に名を残すような大物俳優たちから成る豪華なアンサンブル・キャストの一員であり、皆が自ら進んで「バカっぽく」なることを受け入れ、物語の世界にどっぷりと浸かっています。
セイフライドとメリル・ストリープは、母娘としての関係性にしっかりと説得力があり、結婚準備をするシーンでは胸を打たれる感動すら与えてくれます。
年齢を重ねて再びこの映画を見ると、ソフィがわずか20歳で結婚しようとしている事実に少し引っかかるようになります。もちろん、結婚のタイミングは人それぞれですが、ドナ(母)の「娘が間違った選択をしてしまうのでは」という不安には共感せざるを得ません。
とはいえ、映画自体もこの結婚にどこか違和感があることを理解しています。観客が実際に興味を持つのは、ドナが過去の3人の男性と再会することだということを映画はしっかりと把握しているのです。
この作品がまるでファンタジーのようだと感じるなら、実際にそうだから
展開が非常に予測しやすく、観客が少しストーリーに目を向けただけで、ストリープ演じるドナがピアース・ブロスナン演じるサムと結ばれるべきだと分かってしまうような物語です。
しかし、『マンマ・ミーア!』はその「型にはまった物語」に、ドナの友人たち(クリスティーン・バランスキーとジュリー・ウォルターズ)というカラフルなキャラクターと、ギリシャの離島という美しいロケーションを組み合わせて世界観を築いています。
映像の面では、全編がまぶしいほどの白さで露出オーバー気味に撮られており、それが逆に「実際にロケ地で撮影された」という証でもあります。現代では非常に貴重な演出手法です。
ストーリーの中で、ソフィが「本当の父親を探すことで自分のアイデンティティを探る」というテーマにはほんのわずかしか触れられていません。しかし、この映画には「失われた親との再会」をどう扱うべきかを説く責任はありません。
ABBAの不朽の名曲がこのジュークボックス・ミュージカルを高みに押し上げる
ミュージカル嫌いですら巻き込んでしまう魅力
『マンマ・ミーア!』を単なるロマコメの“罪悪感を伴う楽しみ”に分類するのは簡単です。ですが、この映画は、ストーリーの明らかな問題点を認識しつつも、それでも心から楽しめる作品だという事実を否定できません。
映画の中で最も感情的に真実に近づく瞬間は、ドナとソフィが母娘としての関係を真正面から見つめ合い、その絆の強さと時にそれが障害にもなることを受け止める場面です。これは観客にとっても共感できる大きなテーマであり、この作品の中心にあるのはロマンスではなく、親子の関係性なのです。
*順不同