ビートルズ・ヴォヤージ?

ロンドンのABBAアリーナに対抗する巨大“没入型ライブ”をリバプールが計画!

リバプールのマージー川の岸辺に特別設計のアリーナが建ち、照明が落ちる。1960年代の観客の轟音が響きわたる。そして突如、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ──若き日の姿そのままの4人がステージに現れる。
それは単なる古い映像ではなく、“超リアル”なデジタル・アバター。世界を席巻した頃と同じエネルギーで「She Loves You」を演奏し始める。

これはファンの夢物語ではない。
ロンドンで大ヒットしている「ABBA Voyage」に対抗するべく、リバプール市域のメトロ市長 スティーブ・ロザラムが明らかにした、野心的な計画だ。
そのプロジェクトには物議を醸す“観光税”構想も含まれている。

◆「ヴォヤージ効果」:リバプールが狙う理由

この計画の着想源は明らかだ。
ロンドンの ABBA Voyage はライブ産業を一変させた。
スウェーデンのポップアイコンABBAの“ABBAtar(アバター)”を生成し、100万枚以上のチケットを売り、
「アイドルが“デジタル”で復活してもファンは喜んで観に来る」
ということを証明した。

ロザラム市長は、リバプールこそ同じ成功──いや、それ以上の成功──を収められると確信している。
リバプールはビートルズの故郷であり、マシュー・ストリートやキャヴァーン・クラブには年間数百万人が訪れている。
しかし、最先端の没入型ショーが常設されれば、日帰り観光客を“長期滞在の旅行者”へと変えられる可能性がある。

市長は会合でこう語った。

「2017年から、ABBA Voyageに“似て非なるもの”を実現できないか検討してきた。
例えば、地元出身の、まあまあ成功した“四人組ビートバンド”を取り上げるような企画はどうだろう?」。

目標は、
“世界中から観光客が飛行機に乗って訪れる、国際的な目的地”を作ること。

◆資金はどうする?議論を呼ぶ“観光税”構想

野心的な夢には多額の費用が必要だ。
ABBA Voyage の制作費は 1億4,000万ポンド(約280億円)
同レベルのショーを作るには巨額の資金が必要である。

そこで市長が推すのが、新しい「観光客向け宿泊税」、いわゆる “観光税(tourist tax)” の導入だ。

英国政府の最新予算で、地方自治体が宿泊税を定める権限を持つことが決まり、
リバプールでも導入可能になった。
現在のBIDレヴィ(宿泊1泊につき2ポンドほど)よりも大きな額を設定できるようになる見込みだ。

ロザラム市長はこう主張する。

「 modest(控えめ)な税額でも、年間1,700万ポンド(約34億円)を生み出せる。
海外へ行けば、観光税は必ずある。リバプールにもその仕組みが必要だ」。

徴収した税金は文化プロジェクトのためだけに使うという。
つまり、ホテルに泊まることで、
街のイベント、環境整備、さらには「ビートルズ没入型アリーナ」そのものの開発を支援することになる。

◆“没入型エンタメ都市”としての実績

リバプールはすでに、テクノロジーと文化遺産を組み合わせたイベントで成功を収めている。

  • Cream Classical:大聖堂やピア・ヘッドで開催。オーケストラとレーザーを融合した大規模ダンスイベント。
  • Beyond Van Gogh:没入型アート展。6万人以上が来場。
  • The Light Before Christmas:大聖堂で行われる冬の光のショー。毎年の名物に。

ビートルズの没入型ショーは、これらの頂点となる存在だ。
高度な映像・音響技術を収められる“専用アリーナ”が必要となり、
候補地としては Pier Head や Ten Streets クリエイティブ地区 の再開発案が挙がっている。

◆旅行者にとってはどう変わる?(2026〜2027年頃)

もし計画が進めば、近未来のリバプール旅行は以下のようになるかもしれない。

●料金

ホテル代に数ポンドの追加料金が加算される可能性。
ただし、ローマ、パリ、ニューヨーク同様、世界の大都市ではすでに一般的。

●体験

単にジョン・レノンのピアノを見るだけではなく、
“彼がそれを弾いている姿”を“目の前で観る” ことができる。

●街の雰囲気

税収は無料イベントや文化プログラムにも使われ、
街がより活気づき、安全性も向上すると市は説明。

◆結論:大胆な新時代の鼓動(ビート)?

この計画には明白な理屈がある。
ビートルズはリバプールが持つ“世界最強のブランド”だ。
だがこれまで、最新テクノロジーを駆使してその魅力を“リアルに体験させる”試みは十分ではなかった。

観光税は議論を呼ぶだろう。
安宿を利用する旅行者やホテル業界は、料金上昇を懸念している。
しかしその代償として、
世界のどこにもない超大型アトラクションを手に入れられる可能性がある。

もしリバプールが「Beatles Voyage」を実現できれば、
それはただ過去を懐かしむのではなく、
黄金時代を未来へ──文字通り光と音で──投影する試みとなるだろう。

A “Beatles Voyage”? Liverpool Eyes Massive Immersive Gig to Rival London’s ABBA Arena

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です