ヤーマス、内なる「ダンシング・クイーン」を呼び覚ます:『マンマ・ミーア!』がTh’YARCの舞台へ
*ジェシカ・デミルさんが演じるドナ・シェリダン(中央)が、友人のロージー(演:サラ・ターピン)とターニャ(演:シャーロット・スティーヴンス)から慰めを受ける様子。これは、ヤーマスのTh’YARCで7月に上演される『マンマ・ミーア!』のリハーサル風景の一場面です。
この公演は、Th’YARCにとっても、キャスト・スタッフにとっても大きな挑戦となっています。
そして、ドナ&ザ・ダイナモスやキャストが「ダンシング・クイーン」を歌い踊り出す瞬間、きっとあなたも一緒に歌い、踊らずにはいられなくなるはずです。
ヤーマス在住のジェシカ・デミルさんが、Th’YARCの夏公演『マンマ・ミーア!』の主演ドナ・シェリダン役のオーディションを受けたとき、彼女のABBAファンとしての情熱は全開でした。
「私は『ザ・ウィナー』を歌いました」とデミルさんは語ります。「思い切ってやらなきゃ。あの曲が歌えなければ、この役はできませんから」。
数か月にわたる稽古を経て、このミュージカルは7月10〜12日と17〜19日にヤーマスのTh’YARCのステージ(※)で幕を開けます。
ある日曜日の夜のリハーサルでは、主演キャストにヘッドセット型マイクを装着する作業が行なわれていました。この作品は技術面でも見どころが多く、多くの要素が組み合わさったエンターテインメント作品です。出演者たちは演技だけでなく、歌い、踊ることも求められます。
演出はランディ&ステファニー・ミューズ夫妻が担当しています。ランディさんは「ABBAの音楽は時代を超えて魅力があり、誰にでも響く」と話します。夫妻はかつて映画『マンマ・ミーア!』を観た後、ハリファックスのネプチューン・シアターでの舞台版も観劇しています。
そのときランディさんはステファニーさんに「僕たちにもできるかもしれない」と言ったそうです。
ただ、実際にTh’YARCで上演するまでにはコロナ禍などの影響で5年の歳月がかかりました。
*ヤーマスのTh’YARCで行われた『マンマ・ミーア!』のリハーサル中、演出家ランディ・ミューズから指示を受けている様子。(ティナ・コモー記者)
🎭 初めての本格ミュージカル演出に挑戦
ミューズさんにとって『マンマ・ミーア!』は、初めて本格的に演出を手がけるミュージカルでした。
課題の一つは、作品を上演するための「上演権」を取得することでした。当時『マンマ・ミーア!』はカナダ国内で最も上演申請が多い脚本だったそうです。
🎤 音楽に感謝を込めて
私たちも運転中にひとりで歌ってしまうことがありますよね。でも助手席に誰かがいると、少し控えめになったり…。
『マンマ・ミーア!』では、(映画版でピアース・ブロスナンが「SOS」を歌ったように)自分の殻を破る必要があるため、挑戦となった参加者も多かったようです。
ミューズさんは「オーディションでは、演技・歌・ダンスがすべて求められました。ボランティアの劇団には非常に高いハードルです」と語ります。
けれど、週を追うごとに参加者の緊張もほぐれ、笑顔も増えていったそうです。
「コーラスチームは歌うチームと踊るチームに分けたのですが、踊るチームも歌いますし、歌うチームも踊ります。複雑な振付のナンバーもあり、歌ではハーモニーやバックコーラスが必要で、舞台にいないときでも歌っています」とミューズさんは話します。
*ヤーマスのTh’YARCで上演されるミュージカル『マンマ・ミーア!』より、楽曲「マネー、マネー、マネー」のシーンで踊るダンス・コーラスの一部(ティナ・コモー記者)。
🎭 舞台美術の工夫と舞台裏のチーム
ストーリーがさまざまな場所で展開されるため、多くのセットを組むのは困難でした。
「いろいろなアイデアが出ましたが、コストや実現性の面で断念しました」とミューズさん。
その代わり、舞台上のセットは絶えず移動・転換され、コーラスメンバーたちがその移動作業も行います。
キャストだけでなく、舞台裏で支えるスタッフも素晴らしいとミューズさんは言います。
中でも技術監督のジェームズ・ターピンさんに特別な感謝を述べています。
「主演陣にはヘッドセットマイクを使っています。技術的には通常の公演よりも複雑で、私たちにとっても非常に野心的なプロジェクトです」とミューズさんは語ります。
*「ダンシング・クイーン」なくして『マンマ・ミーア!』は語れません。
このABBAの名曲を披露するのは、サラ・ターピンさん(ロージー役)、ジェシカ・デミルさん(ドナ役)、そしてシャーロット・スティーヴンスさん(ターニャ役)です(ティナ・コモー記者)。
👖 ドナのオーバーオール姿、初お披露目
その日曜のリハーサルで、ジェシカ・デミルさんはドナのオーバーオール姿でロビーに登場しました。彼女の歩き方には、映画版でメリル・ストリープが見せたあの軽やかなステップが感じられました。
「ドナは大きな役です。これまで演じた中で最も難しいキャラクターのひとつ」と語るデミルさん。しかし同時に「とても共感できる人物なので、演じやすいとも言えます」とも話します。
これまでコメディ役を多く演じてきたデミルさんですが、ドナは感情の幅が非常に広い役柄。
「そのすべてを表現する必要がありました。ドナは自立した強い女性ですが、それは今日の多くの女性たちが感じていることでもあると思います。そしてこの作品の中で、突然、彼女はとても脆くなるのです」。
*ヤーマスのTh’YARCで行なわれた『マンマ・ミーア!』のリハーサルの一場面。
サラ・ターピンさん(ロージー役)が、ジェシカ・デミルさん(ドナ役)演じる友人ドナを、「チキチータ」の一節とともに優しく励ます感動的なシーンです(ティナ・コモー記者)。
🎶 感情を揺さぶるABBAの名曲たち
「ザ・ウィナー」は大曲ですが、「スリッピング・スルー」の方が感情的に演じるのが難しいとデミルさんは語ります。「自分の子どもが成長していく姿を歌うと、本当に胸に響きます」とのことです。
キャストとスタッフについても「とても素晴らしいチームです」と述べ、「みんな本当に一生懸命取り組んでいます。ダンスが得意な人、歌が得意な人、両方こなさなければならないので、みんなで教え合いながらやっています」と笑顔を見せます。
「これは地元のコミュニティ劇場の地元の才能による作品です。観客の皆さんに歌って、笑って、笑顔になってもらいたい。今では本当に『ダンシング・クイーン』の気分です」と語りました。
*ヤーマスのTh’YARCで7月に上演されるミュージカル『マンマ・ミーア!』の歌とダンスのナンバーの一場面。
ジェシカ・デミルさん(ドナ役)が、楽曲「マネー、マネー、マネー」に乗せてお金がほしい!と願うシーンです
(ティナ・コモー記者)。
🌟 私には夢がある
ドナの娘・ソフィ役を演じるレイラ・コモーさんも、笑顔が絶えない様子。
デミルさんと同様に、オーディションには本気で臨みました。
「どうしてもこの役をやりたくて、大学から特別に時間をとってオーディションを受けに来ました」と語ります。子どもの頃に映画『マンマ・ミーア!』を観て以来、ABBAの音楽が大好きだったそうです。
「こんなにキャスト全体がしっかりとまとまった作品は初めてです。みんな素晴らしいし、すごく楽しくやれています」と語り、キャスト間の絆の深さを強調します。
「私たちが舞台で楽しんでいることは、観客にも必ず伝わるはずです。それがまた最高にワクワクするんです。」
このプロダクションがこれまでと違った点は、ヴォーカル・コーチの存在。ジェン・マッキントッシュさんが指導に当たっています。
「彼女は本当に素晴らしい方です。私はこれまで本格的なボイストレーニングを受けたことがなくて、劇場で歌い始めた人が多い中、彼女の存在は本当にありがたいです。みんなの声が重なると、とても美しくて感動します」。
*ドナの日記を読んでいるのは、娘ソフィ(右・レイラ・コモーさん)と、友人のアリ(ケイト・ブリュワーさん)、リサ(クリスタン・ブードローさん)です(ティナ・コモー記者)。
*「私のお父さんは誰?」――それが、ヤーマスのTh’YARCで7月に上演されるミュージカル『マンマ・ミーア!』で、ソフィ(演:レイラ・コモーさん)が探ろうとする大きな問いです。
候補は、サム(アレン・ウィッタカーさん)、ビル(イアン・トラヴィスさん)、そしてハリー(シェイマス・マーフィーさん)の3人(ティナ・コモー記者)。
💃 ギミー!ギミー!ギミー!観客の応援を
ランディ・ミューズさんは6回の公演すべてに大勢の観客が来てくれることを期待しています。
「多くの人たちがボランティアで時間を費やしてくれているんです」。
「私たちがどれだけの時間をかけたか、誰も数えていません。でも毎晩のように集まって準備してきました。だからお願いしたいのは、とにかく観に来てほしいということです。一度終わってしまえば、それで終わりなのです」。
「公演は6回。最初の週でみんな話題にしてくれるのですが、2週目はチケットが完売していて観られないことも多いんです。」
そしてこう付け加えました:「Th’YARCにも『マネー、マネー、マネー』が必要です!」。
チケットは劇場のボックスオフィス、またはオンラインで購入可能です。
「ショーを観に来てくださることほど素晴らしいことはありません」とミューズさんは語り、『マンマ・ミーア!』ではステージ上だけでなく、客席でも歌とダンスが巻き起こるだろうと期待しています。
*ヤーマスのTh’YARCで上演されるミュージカル『マンマ・ミーア!』では、スカイ役をディラン・ライノさんが、ソフィ役をレイラ・コモーさんが演じます(ティナ・コモー記者)。
🎭 主なキャスト
- ドナ:ジェシカ・デミル
- ソフィ:レイラ・コモー
- スカイ:ディラン・ライノ
- ターニャ:シャーロット・スティーヴンス
- ロージー:サラ・ターピン
- サム:アレン・ウィッタカー
- ハリー:シェイマス・マーフィー
- ビル:イアン・トラヴィス
- アリ:ケイト・ブリュワー
- リサ:クリスタン・ブードロー
- ペッパー:コリー・コーポロン=ペリー
- エディ:スティーブン・ロスウェル
*ヤーマスのTh’YARCで上演される『マンマ・ミーア!』では、セリフや音楽だけがシーンを印象的にするわけではありません。時には、表情こそがすべてを物語ります(ティナ・コモー記者)。
🎬 主な制作スタッフ
- 演出:ランディ・ミューズ、ステファニー・ミューズ
- 演出助手:リス・マーフィー
- 舞台監督:セレサ・ゴーデット、デヴィッド・ドゥセット
- 技術監督:ジェームズ・ターピン
- 主任振付:ステファニー・ミューズ
- ダンスキャプテン:カリー・グッドウィン
- ボイスキャプテン:ジェン・マッキントッシュ
- 衣装デザイン:リータ・ジャイルズ、リサ・コモー
- 舞台美術・セット建設:ロバート・コモー
*ヤーマスのTh’YARCで行なわれた『マンマ・ミーア!』の夜のリハーサルにて、ドナ(ジェシカ・デミルさん)とソフィ(レイラ・コモーさん)による母娘のやりとりの一幕(ティナ・コモー記者)。
*ビル(演:イアン・トラヴィスさん)、ソフィ(演:レイラ・コモーさん)、そしてハリー(演:シェイマス・マーフィーさん)が、サムのキャラクターに一緒に歌おうと促しているシーンです(ティナ・コモー記者)。
*ドナ(演:ジェシカ・デミルさん)が、サム(演:アレン・ウィッタカーさん)と過ごした島での思い出に、少し浸っている場面です(ティナ・コモー記者)。
*ヤーマスのTh’YARCで上演される『マンマ・ミーア!』のキャストたちは、たくさんの歌とダンスを披露します(ティナ・コモー記者)。
※ヤーマスの Th’YARC(The Yarmouth Arts Regional Centre/ヤーマス芸術地域センター) のステージとは、カナダ・ノバスコシア州ヤーマスにある地域文化の拠点で、演劇や音楽、ダンス、映画など、さまざまな芸術活動が行われる舞台です。
🎭 Th’YARCの概要:
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正式名称:The Yarmouth Arts Regional Centre(ザ・ヤーマス・アーツ・リージョナル・センター)
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所在地:カナダ・ノバスコシア州ヤーマス
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創立:1979年
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特徴:
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約300席規模の劇場を中心に、ギャラリー、リハーサルスタジオなどを備えた複合施設
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地元住民・学生・プロフェッショナルによる演劇公演、ミュージカル、コンサートなどが頻繁に開催
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英語とフランス語圏の文化交流を重視したプログラムも多く、地域の芸術教育の中心的役割も果たしています
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🎶 Th’YARCのステージの魅力:
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舞台と観客席の距離が近く、一体感と臨場感あふれる空間
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地元の才能を発掘・育成する場でもあり、市民参加型の演劇やミュージカルが高く評価されています
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音響・照明設備も整っており、『マンマ・ミーア!』のような音楽性の高い作品にも対応可能