集会ソング、ABBA、そして大爆笑 ― ミス・ローリーがゲーツヘッドに忘れられない夜を届ける

ミス・ローリー(※)が金曜夜、ゲーツヘッドのザ・グラスハウス(※)で「Live Laugh Live」公演を開催

金曜の夜、ゲーツヘッドに「王室訪問」があった。とはいえ、それはウィリアム王子とキャサリン妃が、ある政治家との晩餐会から逃れてやって来たわけではなく、ノースイーストの「コメディの女王」であり「民衆のプリンセス」でもあるミス・ローリーが、ブールバードからタイヌ川を渡ってやってきて、見事な芸で観客を楽しませたのだ。

ミス・ローリーのショーに行けば、必ず笑いがあるし、「笑っちゃいけないんだろうな」と思いつつも抗えずに吹き出してしまう瞬間があり、そして鋭い舌鋒のウィットが待っている。金曜にザ・グラスハウスで「Live Laugh Live」のチケットを手にした観客も、まさにそんなひとときを存分に味わった。

インターナショナル・センター・フォー・ミュージックの通常の演目ではなかなか見られないタイプのショーだったが、サンダーランド・エンパイアでの『インサイド No.9』カメオ出演を経たばかりのミス・ローリーは、まさに「スタンダップ・シンフォニー」を披露。熱狂的で声援の大きな観客を惹きつけただけでなく、本来なら満員御礼であって然るべき出来だった。『What’s Up Hun』や『Land of Hope and Rory』をタイヌ・シアターで観てきた筆者としては、今回のショーこそ彼女の最高傑作だったと断言できる。

*ミス・ローリーの『Live Laugh Live』@ザ・グラスハウス(写真:ヘイドン・ブラウン撮影)

ニューカッスルの舞台において、ポップカルチャーの逸話や観客への即興的な反応で、これほど素早く、鋭い切れ味を見せられるパフォーマーは他にいない。金曜のショーで最前列に座り、自ら「標的」になる位置に身を置いた人々は、勇気の勲章を授与されてもいいくらいだ。

時事問題を遠慮なく話題にすることもあるが、この日彼女がファン、あるいは本人いわく「忠実な弟子たち」に与えたのは、現実のごたごたからの2時間の逃避だった。もちろん、トランプやセント・ジョージ旗についても触れたが、それは何かのアジェンダを押し付けたり意見を強要するためではなく、「社会の現状」に対して集団で嘆きつつ、ワインに酔いながらそのすべてに蓋をする ― そんな安心できる空間を提供するためだった。そして、その夜のトップクラスのコメディは、一瞬たりとも勢いを失うことがなかった。

だが、これは単なるスタンダップ・ギグではなかった。完全な「ショー」だったのだ。冒頭には予想外のフラッシュモブが仕掛けられ、客席のあちこちから歌い手たちが立ち上がり、クイーンの「Don’t Stop Me Now」を熱唱。その後に、この夜の主役が「王室」さながらの壮大な登場を果たした。

さらに驚きは続いた。その名も「集会ソング」。ただのコメディアンではなく、ピアノの腕も披露し、「Come & Praise」時代、学校の講堂で足を組んで座りながら歌った日々に観客をタイムスリップさせた。「Give Me Oil In My Lamp」「He’s Got The Whole World In His Hands」「Shine Jesus Shine」といった歌詞がスクリーンに映し出され、観客は捕らわれたように熱唱し、会場は大合唱に包まれた。

*ミス・ローリーはピアノまで弾いて、懐かしの“集会ソング”を披露した(写真:ヘイドン・ブラウン撮影)

音楽はそこで終わらなかった。最後はABBAメドレーで幕を閉じ、ザ・グラスハウスはまるで「Flares」のダンスフロアと化した。アグネタとフリーダが一人の、少し背の高い音楽アイコンに変身したかのような光景に、観客は目を奪われた。

ミス・ローリーの「Live Laugh Live」は、まるで「All Bar One」の飲み放題ブランチ、潰れたベルベットのソファ、意味深なFacebookステータス、あるいは偽物のUGGブーツのように、ハント(hun)らしさ満載だった。

引き込まれるように面白く、見事な演出で、まさに「HUNスピレーショナル」な夜だった。

※ミス・ローリー(Miss Rory)とは、イギリス・ニューカッスルを拠点に活動する人気ドラァグ・クイーンであり、コメディアンです。

主な特徴

  • 本名はダニエル・カニンガム(Daniel Cunningham)。
  • ニューカッスルの有名なドラァグ&キャバレー会場「Boulevard(ブールバード)」の司会者・看板スターとして広く知られています。
  • 毒舌でありながら洗練されたユーモア、観客との掛け合いの鋭さ、時事問題やポップカルチャーをネタにしたウィットに富んだトークで人気。
  • 地元では「ノースイーストの女王」「民衆のプリンセス」と呼ばれることもあります。

活動

  • バラエティや舞台だけでなく、スタンダップ・コメディショーも定期的に開催。
  • タインサイド地方の劇場(Tyne Theatre、The Glasshouse など)でソロ公演を行ない、いずれも観客を爆笑に包んでいます。
  • テレビドラマ『Inside No. 9』(2024年サンダーランド・エンパイア公演での特別企画)にもカメオ出演し話題になりました。

スタイル

  • 華やかな衣装とハイヒール、派手な化粧で登場する一方で、語り口は北東部なまりの庶民的なもの。
  • 時事ニュースや社会風刺を扱いながらも、観客に「日常を忘れさせる逃避の時間」を提供することを重視しています。

※ザ・グラスハウス(The Glasshouse)とは

ザ・グラスハウス・インターナショナル・センター・フォー・ミュージック(The Glasshouse International Centre for Music)は、イギリス・イングランド北東部ゲーツヘッドにある有名な音楽・文化施設です。

概要

  • 所在地:ゲーツヘッド(ニューカッスルのタイヌ川対岸)
  • 開館:2004年
  • 設計者:世界的建築家 ノーマン・フォスター卿(Sir Norman Foster)
  • 特徴:川沿いに建つ未来的でガラス張りの外観が印象的。波のように丸みを帯びた屋根がシンボルです。

施設と役割

  • コンサートホール:音響に優れた大ホールを含め、規模の異なるホールを備え、クラシックからポップス、ジャズ、現代音楽まで幅広い公演を開催。
  • 教育拠点:青少年や地域住民のための音楽教育プログラムも展開。
  • 地域文化の中心:単なるコンサート会場にとどまらず、ノースイースト地方の音楽文化の発信拠点となっています。

名前について

  • 以前は セージ・ゲーツヘッド(Sage Gateshead) の名で知られていましたが、2023年に改称され、現在は「The Glasshouse International Centre for Music」と呼ばれています。

 

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