ほぼ40年ぶりに、カルト的な人気を誇るミュージカル『チェス(Chess)』が先週末にブロードウェイへ戻り、多くのファンに歓迎され、批評家からは様々な反応が寄せられている。
Photo: chessbroadway.com
Chess.comが5月に報じたように、今回のリバイバルは 1988年の短命なブロードウェイ初演以来、初めてのブロードウェイ上演 を意味する。開幕前の注目度は非常に高く、プレビュー公演は ほぼ100%の客席稼働率 を記録。興行収入は 186万ドル に達し、大ヒットの『ライオンキング』に次ぐ成績だったと The Hollywood Reporter は伝えている。
7年以上にわたり開発された今回の新演出版では、エミー賞受賞者 ダニー・ストロング(『ドープシック』『Empire 成功の代償』) による大幅に改訂された脚本が特徴となっている。
有名な冷戦下の三角関係を、世界チェス選手権の対局を軸に描く物語で、アメリカのグランドマスター フレディ・トランパー(アーロン・トヴェイト) と、そのソ連のライバル アナトリー・セルギエフスキー(ニコラス・クリストファー) の対決が中心となる。
物語の中心人物であり、二人のライバルの間で揺れるハンガリー生まれアメリカ育ちの女性 フローレンス・ヴァッシー を演じるのは、エミー賞ノミネート俳優 リア・ミシェル。彼女は本作の“主役”と呼んでよい存在感を放っている。
プレミアは 11月16日、ニューヨークのインペリアル劇場で開催 され、Broadway.com のレポートでは公演の一部映像を見ることができる。
Chess.comもレッドカーペットに出席し、ストリーマー兼クリエイターの Julesgambit が到着したキャストへインタビューを行なった。
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Chess.com とブロードウェイ公演の提携により、Chess.com のユーザーは フレディ、フローレンス、アナトリーの“ボット”と対局できる 特典が用意された。
トヴェイトは、自分自身のボットと対戦したことを認めている。
「僕のボットは、完全に僕を叩きのめしました。
でも本当に楽しいんです。劇場とは関係ない友人たちの多くが Chess.com を長く使っていて、彼らが僕のボットと対局して、スクショを送ってからかってくる、もう最高ですよ」。
「僕のボットは、完全に僕を叩きのめしました」。
——アーロン・トヴェイト(ブロードウェイ版『CHESS』主演)
では、批評家たちは今回のリバイバルをどう評価したのか?
結論から言えば、レビューは真っ二つに割れている。
New York Daily News はこう総括している:
「この秋のブロードウェイ作品の中で、“嫌いだ”と言う人もいるが、たとえ秘密裏にでも、多くの人は楽しむはずだ」。
多くの批評家は好意的で、作品の最大の魅力はやはりそのスコアだと指摘する。
音楽は ABBA のソングライター・デュオ ベニー・アンダーソンとビヨルン・ウルヴァース によるもので、この楽曲群は作品本体の評価を超えて長く愛され続けてきた。
Washington Post のレビューは比較的前向きで、このリバイバルを「ヒット曲の宝庫(packed with bangers)」と表現し、特に 「ワン・ナイト・イン・バンコク(One Night In Bangkok)」 を絶賛した。
「『CHESS』に地政学的な意味合いを持たせようという試みは、中心にあるメロドラマと相反して感じられるかもしれない。
だが、野心に満ちたこの“混沌とした熱狂的な作品”の結果を見ると、今の私たちは、物語の中のCHESS神童たちがどんな気持ちか、ようやく理解できるのかもしれない」。
New York Magazine の批評家も同曲を称賛し、こう述べている:
「この曲はまったく馬鹿げたほどの高揚感があり、作品全体を成立させてしまうほどだ。
正直、この後も何か筋書きがあったはずだが、私は心も財布も鍵も、そしてシラフまでも、この“バンコク”に置いてきてしまった——でもそれで構わない。
チェスがこんなにハイな気分にさせるなんて、誰が想像した?」。
「『CHESS』がこんなにハイな気分にさせるなんて、誰が想像した?」。
——New York Magazine
People Magazine も肯定的で、
「依然として複雑なゲームだが、この歌唱力なら公演は“完全勝利”を収めている」
と評価した。
一方で、懐疑的な批評家もいる。
New York Times はレビュー「At Least They Have the Music(音楽だけは素晴らしい)」で、本作を
「絶対的にスリリングだが、一部はせいぜい平坦、最悪の場合は攻撃的に愚か」
と表現している。
The Guardian も 2つ星(5点満点) の辛口レビューで、
「散らかっていて、キャッチーなABBAの楽曲が台無しにされている」
と批判した。
よくあることだが、観客レビューは批評家より遥かに肯定的である。
Broadway.com では 64件のレビューで 4.5/5 を獲得している。
いずれにしても、ほぼ40年ぶりにこのミュージカルがブロードウェイのスポットライトを浴びていることは、CHESS界にとっても確実にプラスと言える。
『CHESS』のチケットは chessbroadway.com で購入可能。
https://www.chess.com/news/view/chess-the-musical-returns-to-broadway



