スコットランドの冬の真っただ中、まるで生け垣に引きずり込まれたかのような格好でエディンバラ・プレイハウス(※)に到着してしまいそうな激しい暴風雨(フーリー)の中、私たちは大ヒット・ミュージカル『マンマ・ミーア!』の舞台となるギリシャの太陽を心から求めていた――とモラグ・ブートランドは語る。
そして、エディンバラ・プレイハウスの客席にいる観客たちも、嵐のような天候からの現実逃避を渇望しているのは明らかだった。幕が下りる頃には、観客は大合唱となり、キャストに促されながら「恋のウォータールー」の熱狂的なバージョンに合わせて客席の通路で踊り出すほどだ。
ポップスにほとんど興味がない音楽ファンであっても、ABBAの素晴らしいバック・カタログの大半では、足でリズムを取らずにはいられないだろう。そして、それこそが『マンマ・ミーア!』をこれほどまでに喜びに満ちたミュージカルにしている大きな理由だ。
正直なところ、450都市で7,000万人が観ている作品が間違っているはずがない。
しかし、ドナと、結婚を前に母の3人の元恋人のうち誰が自分の父親なのかを探す娘ソフィの物語は、音楽だけにとどまらない魅力を持っている。物語をこれほどまでに抗いがたいものにしているのは、力強い女性キャラクターたちの存在と、彼女たちの友情のダイナミクスだ。
「ある程度の年齢を重ねた女性たち」に物語の焦点が当てられるのは珍しく、若いソフィと婚約者スカイを軸に物語が展開するとはいえ、この作品の真のスターがドナとその友人たち、そして3人の元恋人たちであることに疑いはない。
キャスト全員から放たれる舞台上のエネルギーは圧倒的だが、なかでもドナ・シェリダン役のジェン・グリフィンの歌声は、上演を通して観客を文字通り驚かせ続けた。とりわけ「ザ・ウィナー」での力強く、忘れがたい歌唱は圧巻で、彼女の演技に込められた感情表現も同様に素晴らしい。
ユーモア面では、ドナの2人の親友が大いに貢献している。マリサ・ハリスによる小気味よく大胆なターニャの演技、そしてロージー・グロソップによる茶目っ気たっぷりのロージーの演技はいずれも秀逸だ。
ハリスが披露する「ダズ・ユア・マザー・ノウ」もまた見どころのひとつで、彼女自身とアンサンブルによる見事なダンスが印象に残る。
また、ソフィ役を演じるリディア・ハントの音程の正確な歌唱にも特筆すべきだ。小柄な体格からは想像できないほどの力強い声と、堂々たる舞台存在感を放っている。
オーケストラはABBAの楽曲を存分に鳴らし切り、このショーには控えめなところはほとんどない――唯一例外を挙げるとすれば、簡素ながらも印象的な舞台装置だろう。音楽は大音量で、それがむしろ心地よく、衣裳はきらびやかで、振付は躍動感に満ちている。
もし「気分が明るくなる体験」を求めているなら、ユーモラスで親しみやすく、美しいキャラクターたちに囲まれながら、ギリシャの島で夜を過ごす以上に良い選択肢はそうそうないだろう。
史上最も有名なポップ・グループのひとつによる楽曲に、たっぷりのきらめきが加われば、成功間違いなしなのは言うまでもない。
『マンマ・ミーア!』は、2026年1月4日までエディンバラ・プレイハウスで上演中。
チケットの予約は www.mamma-mia.com へ。
※エディンバラ・プレイハウス(Edinburgh Playhouse)とは、
スコットランド・エディンバラを代表する大型の劇場/ライブ・エンターテインメント会場です。
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基本情報
- 所在地:スコットランド・エディンバラ中心部
(ヨーク・プレイス/ピカーディ・プレイス近く) - 開場:1929年
- 客席数:約3,000席
※英国有数の大規模劇場 - 運営:Ambassador Theatre Group(ATG)
劇場の特徴
- スコットランド最大級の屋内劇場のひとつ
- 大規模ミュージカル、コンサート、コメディ、バレエなど幅広く上演
- 視界が良く、音響にも定評があるため
ツアー版ミュージカルの“重要拠点”
主な上演作品・ジャンル
- ミュージカル
- 『マンマ・ミーア!』(複数回のクリスマス・シーズン公演)
- 『レ・ミゼラブル』
- 『ライオン・キング』
- コンサート(ポップ/ロック/クラシック)
- スタンドアップ・コメディ
- ダンス・バレエ公演
『マンマ・ミーア!』との関係
- 2004年、2016年、そして今回と
クリスマス・シーズンの再演で特に成功 - 観客参加型の盛り上がりが生まれやすく、
レビューでも「観客が踊り出す劇場」として頻繁に言及される
文脈での意味
Mamma Mia! at Edinburgh Playhouse
→ 「エディンバラ最大級の劇場で上演される、祝祭感あふれる大型公演」
というニュアンスを持ち、
作品の人気・動員力・エンタメ性の高さを示す重要な会場です。
ABBA/『マンマ・ミーア!』のレビュー文脈では、
「寒いスコットランドの冬に、太陽と多幸感を届ける場所」
として象徴的に語られる劇場でもあります。
https://www.scottishfield.co.uk/culture/review-mamma-mia-at-edinburgh-playhouse/




