『マンマ・ミーア!』横浜公演が感動の千秋楽――約4ヵ月の熱狂を胸に、物語はいよいよ広島へ
8月6日(木)、KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉で上演されてきた劇団四季のミュージカル『マンマ・ミーア!』横浜公演が、惜しまれながら千秋楽を迎えました。
今年4月の開幕から約4ヵ月。ABBAの名曲とともに、連日多くの観客を笑顔と感動で包んできた横浜公演。その締めくくりとなったこの日は、開演前から客席に千秋楽ならではの期待感が漂い、舞台の幕が上がる瞬間を待ちわびる観客の熱気で劇場全体が満たされていました。
*鳴りやまない拍手に応える、ドナ・シェリダン役・岡村美南(中央)、ターニャ役・八重沢真美(右)、ロージー役・平田陽子(左)
ABBAの名曲とともに描かれる、母と娘の愛の物語
『マンマ・ミーア!』は、世界的ポップグループABBAの名曲の数々によって紡がれるジュークボックス・ミュージカルです。
物語の舞台は、青い海と空に囲まれたギリシャ・エーゲ海の小さな島。ホテルを切り盛りしながら一人娘のソフィを育ててきた母ドナ・シェリダンと、結婚を目前に控えたソフィを中心に物語は展開します。
「自分の父親と一緒にヴァージンロードを歩きたい」――そう願うソフィは、母の日記をこっそり読み、父親の可能性がある3人の男性の存在を知ります。そして母には内緒で、彼ら全員を自分の結婚式へ招待してしまいます。
そこから始まる、思いがけない再会と騒動の数々。
母と娘の絆、かつての恋、長年にわたる友情、そして人生をもう一度前向きに歩き出そうとする人々の姿が、笑いと涙を交えながら鮮やかに描かれていきます。
オーバーチュアとともに、劇場はエーゲ海の小島へ
迎えた横浜公演の千秋楽。
オーバーチュアが響き渡ると、それまでの劇場の空気は一変。観客は一瞬にして、太陽が降り注ぐギリシャ・エーゲ海の世界へと誘われます。
「マネー、マネー、マネー」「マンマ・ミーア」「ダンシング・クイーン」をはじめ、世代や国境を越えて愛され続けてきたABBAの名曲が次々と登場。そのキャッチーなメロディーに乗せて、登場人物たちの喜び、戸惑い、後悔、そして未来への希望が生き生きと描かれていきました。
ABBAの楽曲を知っている人にとっては、イントロが流れただけで心が躍る瞬間の連続。一方で、ABBAを詳しく知らない観客であっても、物語の中で歌われることによって、それぞれの楽曲に込められた感情を自然に受け止めることができます。
単に「ABBAのヒット曲を集めたミュージカル」ではありません。
楽曲とストーリーが見事に結びつき、登場人物たちの心情を歌が代弁する――それこそが、世界各国で長年愛され続けている『マンマ・ミーア!』の大きな魅力でしょう。
笑いの先に待っている、胸を打つ母娘の絆
作品全体には明るさとユーモアがあふれていますが、その根底に流れているのは、母と娘の深い愛情です。
一人でソフィを育ててきたドナ。そして結婚という人生の大きな節目を迎え、自分自身の人生を歩み始めようとするソフィ。
近すぎるからこそ素直になれないこともあり、互いを大切に思っているからこそ、気持ちがすれ違うこともあります。
そんな二人が結婚式を前に向き合う場面は、この作品の中でもひときわ胸を打つ瞬間です。
また、ドナを支える親友たち、そして突然島に現れた「父親候補」の3人の男性たちも、それぞれが過去と現在に向き合います。若い世代だけではなく、人生経験を重ねた大人たちが「これからどう生きるのか」を模索する姿が描かれているからこそ、『マンマ・ミーア!』は幅広い世代の心をつかむのでしょう。
恋愛や結婚だけではなく、家族とは何か、幸せとは何か、そして自分らしく生きるとはどういうことなのか――。
華やかな音楽とダンスの向こう側には、そんな普遍的なテーマが息づいています。
千秋楽ならではの熱気――客席から惜しみない拍手
物語がクライマックスへ近づくにつれ、客席の集中もさらに高まっていきます。
そしてドナ、ソフィをはじめとする登場人物たちが、それぞれの答えを見つけ、新しい人生へ踏み出していく姿を見届けると、客席からは惜しみない拍手が送られました。
しかし、『マンマ・ミーア!』の楽しさは物語の終幕だけでは終わりません。
待っているのは、この作品ならではの華やかなカーテンコールです。
おなじみのABBAナンバーが響き渡ると、それまで舞台を見守っていた観客の興奮も一気に最高潮へ。客席にはペンライトの光が広がり、舞台と客席がひとつになって千秋楽を祝福しました。
そこにあったのは、「終わってしまう寂しさ」以上に、この作品に出会えた喜びを分かち合うような空気でした。
音楽に合わせて揺れる無数の光、鳴りやまない拍手、そして観客の笑顔――。
劇場全体が圧倒的な多幸感に包まれるなか、『マンマ・ミーア!』横浜公演は華々しくフィナーレを迎えました。
2002年の日本初演から愛され続ける『マンマ・ミーア!』
劇団四季による『マンマ・ミーア!』は、2002年の日本初演以来、長年にわたり多くの観客に愛されてきました。
時代の変化に合わせて振付や台詞などにもアップデートを重ねながら、その中心にある「人生を楽しむこと」「自分らしく生きること」というメッセージは変わることなく受け継がれています。
今回も名古屋、そして横浜と、多くの観客を熱狂させてきました。
何度観ても元気になれる。
何度観ても笑える。
そして、同じ場面であっても、その時々の自分の人生によって心に響く言葉や歌が変わってくる――。
それも『マンマ・ミーア!』が20年以上にわたって日本の観客から支持され続けている理由のひとつかもしれません。
横浜から、いよいよフィナーレの地・広島へ
横浜で約4ヵ月にわたって続いた熱狂は、ここで終わりではありません。
『マンマ・ミーア!』は、いよいよ今回の公演のフィナーレの地となる広島へ向かいます。
広島公演は、10月4日(日)から11月23日(月・祝)までの期間限定公演。
ABBAの名曲、躍動感あふれるダンス、笑いと涙のストーリー、そして観劇後に思わず誰かと幸せを分かち合いたくなるような爽快感――。
『マンマ・ミーア!』には、ミュージカルという枠を超えて、明日へ向かうエネルギーを観客に届ける力があります。
横浜で生まれたたくさんの笑顔と拍手を携えて、物語は次の街へ。
「人生って、素晴らしい!」
そんな気持ちを思い出させてくれる、とびきりハッピーなミュージカル『マンマ・ミーア!』。横浜公演の感動を受け継ぎ、広島ではどのような熱狂が生まれるのか――今から楽しみです。
【KAAT神奈川千秋楽模様】

*写真提供:劇団四季
*イラスト:筆者
*敬称略














