世界的な音楽グループABBAの一員として名声と富を手にしたアンニ＝フリード・リングスタッド（フリーダ）が、人生における深い悲しみと苦悩について語っている。新たに出版された伝記では、彼女の父親がナチス・ドイツと関わっていたことに起因する、彼女の幼少期からの痛みが明かされている。
1970年代にスウェーデンのポップグループABBAの一員として名を馳せたアンニ＝フリード・リングスタッドは、1945年にノルウェーで19歳の母親とドイツ人のナチス軍曹との間に生まれた。
＊アンニ＝フリード、またはフリーダは、32歳になるまで父親に会うことはなかった（画像：ゲッティ）。
彼女の父親アルフレッド・ハーゼ（Alfred Haase）は、戦時中にヒトラーの軍に所属し、ノルウェーに駐留していた兵士だった。母親シンニ（Synni）は、彼が既にドイツに妻と子どもを持っていたことを知らずに恋に落ちた。
しかし、フリーダが生まれる前から、母親は地元社会からの侮蔑と非難の的となり、通りでは唾を吐きかけられ、「ドイツ兵と関係を持った女（水平協力者）」と罵倒された。フリーダ自身も「ナチの落とし子」と呼ばれることもあった。
戦後、ナチス兵とノルウェー人女性の間に生まれた子どもたちは数千人規模で差別され、孤立していった。ナチスが推進したSSの出産奨励プログラム「レーベンスボルン（Lebensborn）」では、“人種的に純粋”と見なされた女性との子どもを産ませることが奨励されており、ノルウェーはその理想的な対象国とされた。
＊ABBAは1974年にユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝した（画像：ゲッティ）。
Jan Gradvallによる新刊『The Story of ABBA: Melancholy Undercover』のMail Online掲載抜粋によれば、母シンニは、アルフレッドがいつか迎えに来てくれると信じていた。しかし彼は二人を置いて去り、二度と戻ってこなかった。
状況が悪化する中、祖母のアンニはフリーダを連れてスウェーデンへ渡り、新たな生活を始めた。一方、母親シンニはノルウェーに残り、働きながら生計を立てていた。家族の再会は、1947年、シンニが腎不全で亡くなったことにより叶わなかった。彼女はわずか21歳、フリーダが2歳になる前のことだった。
＊フリーダは最終的に父親と再会した（画像：ゲッティ）。
フリーダはスウェーデンで祖母に育てられたが、愛情に包まれた環境とはいえなかった。「私たちは、ただ二人の孤独な人間が一緒にいただけだった」と彼女は後に語っている。「抱きしめられたり、キスされたりすることはなかった」。
彼女は父親が戦争で亡くなったと信じて育った。しかし1977年、フリーダが32歳でABBAが世界的な成功を収めていた最中、彼がまだ生きていることを知る。
そのきっかけは、フリーダの異母兄弟の娘にあたるドイツ人の少女が雑誌インタビューを読んで、「祖父に似ている」と気づいたことだった。その後、西ドイツでフリーダとアルフレッドの再会が実現した。
「彼は良い人だと思ったわ」とフリーダは語る。「でも、やっぱり私には奇妙な感覚しかなかった。私はすでに32歳で、自分の家族も子どももいた。もし彼ともっと早くから知り合っていれば、別の絆が育まれていたかもしれない」。
＊フリーダとABBAのメンバーは、それぞれ約3億ポンドの資産があると推定されている（画像：ゲッティ）。
Gradvallの本では、Fridaの人生におけるさらなる個人的悲劇も綴られている。
1998年、フリーダの娘アン・リセ＝ロッテ（Ann Lise-Lotte）がアメリカで自動車事故により亡くなった。彼女は31歳になる直前だった。そのわずか1年後、フリーダの3人目の夫であるハインリヒ・ルッツォ・ロイス・フォン・プラウン侯爵（Prince Heinrich Ruzzo Reuss von Plauen）ががんで死去。享年49歳。二人は1992年に結婚していた。
そして2023年の秋には、フリーダの孫ジョナサン（Jonathan）もがんとの闘病の末に亡くなった。
数多くの喪失を振り返って、フリーダはこう語っている。「本当に長い時間がかかりました。言葉では言い表せないほどの深い悲しみに、何年も苦しみました」。
『マンマ・ミーア！』第3作の製作に関する憶測や、ロンドンで続くABBAのヴァーチャル・コンサート『Voyage』の成功が続く一方で、Gradvallの新刊は、華やかな舞台やスターダムの裏に隠されたFridaの人生──秘密、喪失、そして生き延びてきた記録──を描き出している。
https://www.express.co.uk/celebrity-news/2072070/abba-legends-agony-secret-nazi-father
