ABBAのスター、ビヨルン・ウルヴァースは、「ABBA VOYAGE」のホログラムショーを通じて音楽業界の技術革新に身を投じ、さらに音楽とAIに関する啓発活動にも取り組んできた。そんな彼がSXSWロンドンの場で、AIを活用して音楽を制作する際には、「音楽の質を保つために“内なる指針”に頼ることが不可欠だ」と語った。
これは、AI生成音楽に対するウルヴァースの批判的な立場とも一致している。彼は、国際ソングライター・作曲家連盟(International Confederation of Songwriters and Composers)と連携しながら、音楽家やクリエイターの権利を代表して活動しており、「AIが生成する音楽の多くが、人間の作った既存の音楽を搾取している。にもかかわらず、その人間には対価が支払われない」と問題提起している。
*ABBAのスター、ビヨルン・ウルヴァースは、SXSWロンドンのイベントで音楽とAIの未来について語った(写真:ゲッティ)。
ショーディッチで開催されたSXSWロンドンのイベントにて、彼は次のように主張した:
「人間の才能と、本能的に“これは良い、これはダメだ”と判断できる力が、AIのツールと組み合わさって初めて意味をなすのです」。
「“これは良い、残そう”“これはゴミだ、捨てよう”と判断できる“内なる指針”が必要なのです」。
そしてこう続けた:
「作詞作曲における才能があるとすれば、それはこの判断力です。あとは努力あるのみです」。
さらにAIの活用についてはこう語った:
「機械と何度もアイデアをやりとりすることができるのは、想像を超える体験です。本当に“行きつ戻りつ”を繰り返すのです」。
「AIは作詞に関してはとても下手ですが、アイディアをくれることがあります」。
「まるでもう1人の作詞作曲家が部屋にいて、膨大な参考資料を持っているようなもの。まさに自分の思考を拡張した存在なんです。今まで思いつかなかった発想にアクセスできるのです」。
ビヨルンは、「ABBA VOYAGE」公演をロンドンで実現させた立役者でもあり、同公演は大成功を収めている。1970年代に誕生したABBAの4人をホログラムで再現し、毎晩ライブの観客の前で“復活”させている。
自身のABBA時代を振り返って、彼はこう語った:
「私たちは、アイディアの95%を捨てることを学びました」。
「“今年は200曲書いた”という人がいますが、本当にそうだとは思えません。そのうちの10%残せれば良い方でしょう。私たちも、何週間も“フルタイムのオフィスワーク”のように作業しても、何の成果も得られないことがありました」。
AI時代におけるクオリティの高い創作のために必要な姿勢について、彼はこう警鐘を鳴らした:
「多くの人が、“もうこれで十分だ”と制作を終えてしまいます。でもそれではダメなんです。あとほんの数インチ、踏み込まなければならないんです」。
SXSWフェスティバルは、1987年にアメリカ・テキサス州オースティンで「アイディアの祭典」として始まった。今回ロンドンで初開催となったこのイベントでは、数百の講演、ワークショップ、マスタークラス、ライブ音楽や映画上映が行われ、思想的リーダー、起業家、クリエイターが集結している。ショーディッチ地区全域で6月7日まで開催されており、初日にはロンドン市長サディク・カーンが登壇し、「ロンドンを国際的なAI拠点に」とアピールした。
ABBA legend reveals his one rule for making AI music at SXSW London event