ABBAの名曲が『マンマ・ミーア!』の物語をどう形づくっているか

『マンマ・ミーア!』は現在、ニューヨークのウィンターガーデン・シアターにて、2026年2月1日まで上演されています。

10年以上もの間ブロードウェイから離れていた『マンマ・ミーア!』が、ついに本来あるべき場所へ戻ってきました!今週、ウィンターガーデン・シアターにてプレビュー公演が始まります。
ダイナモス(Donna and the Dynamos)の3人が再びステージに登場するのを心待ちにしている今こそ、本作のインスピレーションとなったABBAの楽曲の数々と、それらが物語にどのように活かされているかを振り返る絶好のタイミングです。※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

「Honey, Honey(ハニー・ハニー)」

  • 解説:この曲は、ABBAのセカンド・スタジオアルバム『恋のウォータールー』から、「恋のウォータールー」に続くセカンドシングルとしてリリースされました。なお、ABBAがスウェーデン語で公式にレコーディングした最後の曲でもあります。
  • 劇中での使用:ソフィと友人たちがドナの古い日記を発見し、曲に合わせて彼女の過去の恋愛遍歴、つまり3人の男性との関係について知る場面です。これにより、ソフィは「自分の本当の父親を見つける」ために、3人の男性を結婚式に招待するという計画を思いつきます。

「Money, Money, Money(マネー、マネー、マネー)」

  • 解説:この曲は、1976年にリリースされたABBAの4作目のアルバム『アライヴァル』からのセカンドシングルで、もともとのタイトルは「Gypsy Girl(ジプシー・ガール)」でした。
  • 劇中での使用:ドナが、自ら経営するタベルナ(小さな宿兼レストラン)での苦労と、経済的に厳しい状況を嘆きながら、裕福な男性に救われたいという願望を歌い上げるシーンです。

「Thank You for the Music(サンキュー・フォー・ザ・ミュージック)」

  • 解説:この曲は、1977年の『ABBA: ジ・アルバム』に収録され、1978年には「イーグル」とのダブルA面シングルとして複数の国でリリースされました。
  • 劇中での使用:ソフィがサム、ビル、ハリーの3人を島に迎えた際に流れ、彼らに「自分からの招待だったことは秘密にしてほしい」と頼む場面で使われます。

「Mamma Mia(マンマ・ミーア)」

  • 解説:1975年に発売された『ABBA』というセルフタイトルの3作目のアルバムのオープニングトラック。ABBAにとって「恋のウォータールー」以来のUKチャート1位獲得曲となりました。2021年には、ローリングストーン誌が選ぶ「ABBAの楽曲ベスト25」で第5位にランクインしました。
  • 劇中での使用:ドナが長年会っていなかった3人の元恋人たちと突然再会し、心が大きく揺れ動くさまを歌うシーンです。昔の想いがよみがえり、感情の混乱に包まれます。

「Chiquitita(チキチータ)」

  • 解説:「チキチータ(スペイン語で“小さな女の子”)」は、1979年にリリースされたアルバム『ヴーレ・ヴ―』の第1弾シングルです。
  • 劇中での使用:ターニャとロージーが、突然の元恋人たちの登場に落ち込んでいるドナを慰めようとする場面で歌われます。友情の力でドナを元気づけようとする、心温まる場面です。

「Dancing Queen(ダンシング・クイーン)」

  • 解説:1976年にリリースされた『アライヴァル』のリードシングル。全世界で大ヒットし、ABBAにとってアメリカで唯一のナンバーワンヒットとなりました。2015年にはグラミー殿堂入りを果たし、2004年版ローリングストーン誌「史上最高の500曲」では171位にランクインしました(ABBAの中で唯一)。
  • 劇中での使用:ターニャとロージーが、落ち込むドナに「あなたはかつて“ダンシング・クイーン”だった」と明るく励まし、彼女を元気づけるために歌い踊るシーン。過去の輝かしい日々を思い出させる力強い友情の瞬間です。

「Lay All Your Love on Me(レイ・オール・ユア・ラヴ・オン・ミー)」

  • 解説:ABBAの7枚目のスタジオアルバム『スーパー・トゥルーパー』(1980年)からの6枚目、かつ最後のシングル。1981年夏にリリースされ、12インチレコードとしては当時英国史上最高の売上を記録しました。
  • 劇中での使用:ソフィとスカイが互いへの愛を誓い合うロマンチックなデュエットとして始まり、その後ビーチでスカイの友人たちとの賑やかなダンスシーンへと展開します。結婚式前夜の高揚感を表す場面です。

「Super Trouper(スーパー・トゥルーパー)」

  • 解説:1980年にリリースされた同名アルバムのタイトル曲であり、サードシングル。複数の国で1位を獲得したヒット曲です。
  • 劇中での使用:ソフィのバチェロレッテ・パーティーで、ドナと旧友のターニャ、ロージーによるユニット「ダイナモス」が再結成され、華やかにステージパフォーマンスを披露します。

「Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)(ギミー!ギミー!ギミー!)」

  • 解説:1979年に、北米およびヨーロッパツアーのプロモーション用に制作された楽曲で、ベストアルバム『Greatest Hits Vol. 2』から唯一のシングルとしてリリースされました。
  • 劇中での使用:バチェロレッテ・パーティーの最中、サム、ビル、ハリーの3人が突然現れ、会場が騒然とする場面で使われます。ドタバタ感と緊張感が入り混じるコミカルなシーンです。

「The Name of the Game(きらめきの序曲)」

  • 解説:この曲は『ABBA:ジ・アルバム』(1977年)のために最初に録音された曲で、元々の仮タイトルは「A Bit of Myself」でした。
  • 劇中での使用:ソフィが、ビルが自分の父親かもしれないと思い、さりげなく過去の話を引き出そうとする場面。問いかけの中に不安と希望が入り混じります。

「Voulez-Vous(ヴーレ・ヴー)」

  • 解説:1979年リリースの同名アルバム『ヴーレ・ヴ―』の2曲目に収録され、1992年にはベストアルバム『Gold: Greatest Hits』のプロモーションとして再シングル化されました。ABBA楽曲の中で唯一、公式に拡張ダンス・リミックス版が発表された曲でもあります。
  • 劇中での使用:3人の男性それぞれが自分が父親だと信じて疑わない中、ソフィは混乱とプレッシャーに押しつぶされそうになります。その心情が爆発するようなダンスシーンです。

「Under Attack(アンダー・アタック)」

  • 解説:1982年にリリースされたベスト盤『The Singles: The First Ten Years』からの最後のシングル。この曲のリリースを最後に、ABBAは約40年にわたり活動休止に入ります。
  • 劇中での使用:ソフィが悪夢の中で、3人の「父親」が誰がバージンロードを歩かせるかで争うという混乱に包まれるシーンです。葛藤とプレッシャーの象徴となる幻想的な場面。

「One of Us(ワン・オブ・アス)」

  • 解説:1981年にリリースされた、ABBAの8枚目のスタジオアルバム『ザ・ヴィジターズ』からのリードシングル。北米では1983年にシングルカットされ、ベスト盤『The Singles』のプロモーションに使用されました。
  • 劇中での使用:ソフィが、父親を知らずに育てられたことへの怒りや悲しみをドナにぶつける場面です。ドナは、自分の選択が娘に与えた影響について深く思い悩みます。

「SOS」

  • 解説:1975年6月に、セルフタイトルのアルバム『ABBA』から5枚目のシングルとしてリリースされました。「Waterloo」以来、ABBAにとって最初の世界的ヒットとなり、同年末のベスト盤『Greatest Hits』の冒頭を飾る1曲にもなっています。
  • 劇中での使用:ドナとサムが、過去に果たせなかった思いを語り合う場面。心の奥に残った未練や愛情を、互いにうまく言葉にできずに苦しむ二人の複雑な感情が表現されます。

「Does Your Mother Know(ダズ・ユア・マザー・ノウ)」

  • 解説:1979年の6作目のスタジオアルバム『ヴーレ・ヴ―』に収録。ABBAのシングルの中で唯一、ビヨルン・ウルヴァースがリードボーカルを務めた曲として知られています。
  • 劇中での使用:ターニャが年下の男性に言い寄られ、冗談まじりにあしらう場面。ユーモアと小悪魔的な魅力を交えた、軽やかで楽しいやり取りです。

「Knowing Me, Knowing You(ノウイング・ミー、ノウイング・ユー)」

  • 解説:1976年のアルバム『アライヴァルl』からの3枚目のシングル。2021年にはローリングストーン誌の「ABBA楽曲ベスト25」で第2位にランクインするなど、現在でも高い評価を受けています。
  • 劇中での使用:サムがソフィに対して、恋愛や結婚についての経験を語る場面。年長者としてのアドバイスが、重みをもって響きます。

「Our Last Summer(アワ・ラスト・サマー)」

  • 解説:ABBAの7枚目のアルバム『スーパー・トゥルーパー』(1980年)に収録。作詞者ビヨルン・ウルヴァースのパリでの夏の恋の思い出に着想を得て作られた曲です。
  • 劇中での使用:ハリーとドナが若かりし頃の夏の恋を懐かしく語り合うシーン。過去の温かい記憶と、それが現在にもたらす余韻を描きます。

「Slipping Through My Fingers(スリッピング・スルー)」

  • 解説:1981年のアルバム『ザ・ヴィジターズ』に収録。日本ではコカ・コーラによるプロモーション用レコードとして初めてリリースされました。
  • 劇中での使用:結婚式を前に、ドナがソフィの髪を整える場面。娘の成長と、子ども時代がいつの間にか過ぎ去っていたことへの切ない気づきが、深い愛情とともに描かれます。

「The Winner Takes It All(ザ・ウィナー)」

  • 解説:1980年のアルバム『スーパー・トゥルーパー』のリードシングルで、ABBAにとってアメリカで4番目にして最後のトップ10ヒット(Billboard Hot 100で8位)となりました。現在ではABBAの代表曲のひとつとされ、イギリスでは「最も愛されているABBAソング」とも言われています。この曲が、1983年に舞台プロデューサーのジュディ・クレイマーに「ABBAの楽曲でミュージカルを作ろう」と思わせるきっかけになったといわれています。
  • 劇中での使用:ドナが、サムとの破局による深い悲しみと喪失感を歌う場面。感情を抑えきれず、一気に吐き出すような圧倒的な歌唱が印象的です。

「Take a Chance on Me(テイク・ア・チャンス)」

  • 解説:1977年のアルバム『ABBA: ジ・アルバム』からのセカンドシングル。イギリスとアメリカの両方でトップ10入りし、1992年にはイレイジャーによってカバーされ再ヒットしました。
  • 劇中での使用:ロージーがビルに「一緒に生きていこう」と積極的にアプローチする場面。ビルの独身主義に挑戦するような、明るくユーモラスな求愛シーンです。

「I Do, I Do, I Do, I Do, I Do(アイ・ドゥ・アイ・ドゥ)」

  • 解説:1975年にリリースされた、ABBAの3枚目のアルバム『ABBA』からの3番目のシングルで、B面は「ロック・ミー」。
  • 劇中での使用:結婚式の最中に、サムがドナに対し再び愛を告げ、正式にプロポーズする感動的なシーンです。

「I Have a Dream(アイ・ハヴ・ア・ドリーム)」

  • 解説:1979年の『ヴーレ・ヴ―』からの最後のシングル。多くの国でチャート1位を獲得し、イギリスでは2位にランクインする大ヒットとなりました。
  • 劇中での使用:ソフィが未来への希望を語りながら、スカイと共に旅立つフィナーレの場面で歌われます。新たな人生の始まりを象徴する曲です。

「Waterloo(恋のウォータールー)」

  • 解説:1974年の同名アルバムのタイトル曲であり、ABBAとしての初のシングル。同年、スウェーデン代表としてユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、見事優勝。ABBAの世界的成功の始まりとなりました。2005年、ユーロビジョン50周年記念の際には、「史上最高のユーロビジョン楽曲」に選ばれました。
  • 劇中での使用:フィナーレのアンコールで、サム、ビル、ハリーを含むキャスト全員がステージに再登場し、華やかに歌い踊るシーン。観客との一体感が最高潮に達します。

https://www.broadwayworld.com/article/MAMMA-MIA-Is-Back-A-Look-at-the-Iconic-ABBA-Songs-That-Drive-the-Musical-20250727

 

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