ABBAファンとボウイ・ファンにとって、いま必訪の地となりつつある個性派イギリスの町

ロンドン東部のある一角には、世界中の「ダンシング・クイーン」や「スペース・オディティ(宇宙の異端者)」たちにとっての聖地(メッカ)になりつつある空気感が、いま確かに漂っている。

*V&Aイースト・ストアハウス(クイーン・エリザベス・オリンピック・パーク/ストラトフォード内)では、音楽ファンや歴史ファンにとって、愛してやまない見どころが数多く見つかるだろう。

歴史的に見ても、ストラトフォードは常に音楽とパフォーマンスに深く根ざした街だった。
ストラトフォード&イースト・ロンドン音楽祭は1882年に創設され、シアター・ロイヤル・ストラトフォード・イーストも1884年に開館。それ以来、数々の名作舞台やプロダクションを上演し続けてきた。またこの街は、ラッパーのJ・ハスや、ジャズ・ピアニストのデレク・スミスの出身地でもある。

2012年、ロンドンが夏季オリンピックを開催するにあたって、クイーン・エリザベス・オリンピック・パークという専用施設の建設を含む大規模再開発が行なわれた。ハックニーやダルストンにも近いこの地域は、その後、ある意外な“国際的4人組”の存在によって、再び大きな復活を遂げることになる。

ABBAがストラトフォードを変えた

2022年以降、この地域はプディング・ミル・レーンに建つ「ABBAアリーナ」の本拠地となった。ここでは、制作費1億7500万ドル規模という驚異のテクノロジーショー「ABBA Voyage」が連夜上演されている。

私は、この公演が初公開されて以来、周囲から絶賛の声ばかりを聞いていたこともあり、ついにそのスペクタクルをこの目で見る機会を得ることに。近すぎず、遠すぎず、しかも価格も良心的な立地として、ある秋の夜に私はストラトフォード滞在を選んだ。

ABBA Voyageは驚異的なショーで、ヒット曲がぎっしり詰まっている。(PA)

YOTELPAD ロンドン・ストラトフォード滞在記

宿泊したのは YOTELPAD ロンドン・ストラトフォード。ここでは、客室のことを「客室」ではなく、「プロパティ(PAD)」と呼ぶのが少し可愛らしい。
窓からは、ストラトフォード図書館とセント・ジョンズ教会の美しい景色を一望できた。

室内には、深夜に料理の腕を振るいたくなった時用(?)のチーズおろし器まで完備という、必要なものはすべて揃っている。

中でも特に感動したのは、完全可動式のスマートベッド。ボタンひとつで、直立型ソファからクイーンサイズのフルベッドへと変形する。とても斬新で、限られた空間を最大限に活かす秀逸な仕組みだ。

ABBAファンで賑わうレストラン

ホテル周辺には、チェーン系レストランや屋台フードの店が多数あり、いつでも馴染みの味にありつける。ただし、少し足を伸ばせば、地元ならではの名店にも出会える。

たとえば FIGO Stratford は、スパンコールやキラキラのトップスに身を包んだABBAファンで大賑わいだった。提供されるのは、心温まるイタリア家庭料理。私は ラム肉のタリアテッレ・ラグー(26.90ポンド)を注文。トマトソースでじっくり煮込んだラム肉に、たっぷりのパルメザンがかかり、滋味深く、食べ応えのある一皿だった。

*YOTELPAD ロンドン・ストラトフォードには、静かで快適な一夜を過ごすために必要なものがすべて揃っている。

ギリシャ料理の名店 HERA

ギリシャ料理店 HERA もまた、特筆すべき一軒だ。
ここはシェアスタイルのメゼ料理が中心で、フムス、カラマリ、トリュフ入りブッラータのほか、パスタやグリル料理も揃う。私は ラムチョップのグリル(29.90ポンド)を選んだが、完璧な焼き加減で、ローズマリーの香りが効いた炭火風味が素晴らしかった。

深夜の遊び場も充実

夜遅くに楽しめる場所としては、近くの Bat and Ball が最適だ。シャッフルボードや対戦型ダーツで盛り上がれる。2フロアに広がるこの賑やかな空間は、ほどよい競争心を煽るナイトスポットだ。

ジン好き必訪の 「Jim & Tonic East」

さらに、元印刷工場を改装したクラフトジン蒸留所&バー Jim & Tonic East も見逃せない。屋内外に多くの席を備え、専用ジンバスまである

カクテルも一級品で、

  • 「ドラゴン」(ジャスミンと四川胡椒のジン+マヨルカ産トニック+セージ+ピンクペッパー)
  • 「バンブル・ビー」(ルバーブ&ハチミツのジン+自家製ラズベリーシロップ+プロセッコ)
    などが楽しめる。ここはABBAアリーナのすぐ近くという立地も魅力だ。

FIGO Stratfordでいただいた「タリアテッレ・ラム・ラグー(26.90ポンド)」は、
トマトソースでじっくりと煮込まれたラム肉を使った一皿だった。

ABBA Voyage 体験記

ABBA Voyage は、まぎれもなく“スペクタクル”だった。

正直に言えば、私はこのショーが発表された当初、「ホログラムでアリーナが本当に盛り上がるのか?」と半信半疑だった。だが、わずか数分でその疑念は吹き飛んだ。
まるでベニーやアグネタが目の前に本当に存在しているかのように錯覚しながら、「レイ・オール・ユア・ラヴ・オン・ミー」で私は完全に人生の絶頂を迎えていた。

この 3,000人収容の会場自体もまた驚異だ。
チケットは座席指定と「ダンスフロア」立見があり、私は後者を選んだが、これは本気でおすすめしたい選択だ(チケットは1枚55ポンドから)。

この陽気な音楽が生み出す一体感は、観客を完全にショーの一部にしてしまう。リアルすぎるホログラムとステージ上の軽快なトーク、さらにレーザーや巨大映像背景、そして生バンドとバックシンガーまで揃い、何が現実で何が仮想なのか、途中で本気で分からなくなる瞬間が何度もあった。

V&Aイースト・ストアハウス内にある
デヴィッド・ボウイ・センターは、音楽ファンにとって必見のスポットだ。

ボウイ・ファンの新たな聖地

音楽ファンにとって、もうひとつのストラトフォードの目玉は、近隣のハックニー・ウィックにある
デヴィッド・ボウイ・センター(V&A イースト・ストアハウス内)だ。

ここでは、ジギー・スターダストの生みの親へのオマージュとして、衣装、受賞トロフィー、直筆歌詞、手紙などが展示されている。

規模は小さいが、無料の事前予約が必須で、現在は常に完売状態。しかし、音楽界の伝説の別の一面を知りたい人には、確実に価値のある場所だ。

隣接する V&A ストアハウス本館も入場無料で、ぜひ立ち寄りたい。

ストラトフォードは、活気あふれる
ハックニー・ブリッジのようなエリアからも、それほど遠くない場所にある。

圧倒されるコレクションの迷宮

そこには、巨大な謎のパンダ像からモザイク皿、ヴィクトリア朝のワードローブ、日本の侍の仮面まで、信じられないほど多彩な歴史資料が通路一面に並んでいる。

やや無秩序にも感じる展示だが、コレクションブックを手に取り、奇妙で不思議な世界に迷い込む楽しさがある。気がつけば、あっという間に時間が過ぎてしまう。

ハックニー・ブリッジと朝食

時間があれば、近くの ハックニー・ブリッジ まで散歩するのもおすすめだ。ランナーや犬の散歩をする人、運河を行き交うボートで賑わい、晴れた日も、ひんやりした秋の日も心地よい散策コースになっている。

近くの The Breakfast Club では、最高の朝食が味わえる(特にハッシュブラウンは絶品)。

YOTELPAD ロンドン・ストラトフォードの客室は広々としており、ロンドンの中でも非常に立地の良いエリアに位置している。

旅の締めくくり

再びYOTELPADに戻り、スマートベッドをベッドスタイルに変え、読書をしながら眠りにつく。
正直に言うと、ABBAがなければストラトフォードに目を向けることはなかったかもしれない。だが、今回の小さな探検で、この街がとても魅力的だと分かった。

まだまだ行けていない場所も多いし、ユーストン駅からも短時間で来られる。再訪する理由は十分すぎるほどある。

私はロンドンに関してはかなり辛口だ。人混みや観光地の喧騒にはどうしても疲れてしまう。
だが、ストラトフォードには不思議と“マンチェスターのような親しみやすさ”がある。

ストラトフォード、必ずまた戻ってくる。

データファイル(Fact file)

  • 宿泊:YOTELPAD ロンドン・ストラトフォード
    住所:104 Broadway, E15 1NG
  • 料金:2名1室 クイーンルーム 1泊151ポンド~
  • ブラックフライデーセール
    2025年11月19日~12月3日予約分対象
    宿泊対象期間:2025年11月20日~2026年11月31日
    最大40%オフ/14日間キャンセル可
  • ABBA Voyage チケット:1枚55ポンド~
  • ABBA アリーナ所在地
    クイーン・エリザベス・オリンピック・パーク
    最寄駅:プディング・ミル・レーン駅/ストラトフォード駅

https://www.manchestereveningnews.co.uk/trips-and-breaks/quirky-uk-town-thats-fast-32806797

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