今、絶賛放送中のNHK朝ドラ『ばけばけ』は、日本の美を世界に発信した稀代の紀行作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の物語である。
日本各地の伝承を独自の感性で再話した短編集『怪談』(1904年)は彼の代表作だ。
特に「耳なし芳一」や「雪女」はあまりにも有名であり、怪奇と日本的な美を融合させた不朽の名作として今なお読み継がれている。
そんな“オカルト”の空気を感じさせる時代の中で、『怪談』にも匹敵するほどの迫力を持つ表現を、一人の女優に見た。
それは『マンマ・ミーア!』名古屋公演千秋楽でのことである。
その女優こそ、岡村美南演じるドナであった。
2002年の『マンマ・ミーア!』日本公演開始以来、私はこれまで一体どれほど多くのドナを見てきただろうか。
しかし、ここまでゾクゾクさせられたドナは、初めてだった。
完璧な歌唱力。
隙のない演技。
そして、これまでのどのドナにも見られなかった、生身の人間そのものの喜怒哀楽。
岡村美南は、まさに「完璧なドナ」を舞台上に出現させたのである。
過去24年の歴代ドナの中で「誰がNo.1か」と問われれば、即答するのは難しい。
しかし、今回の岡村ドナが見せた感情の振れ幅の大きさは、間違いなく特筆すべきものである。
この喜怒哀楽の高低差を、彼女はいったいどのようにして作り上げたのか。
ぜひ一度、本人に直接聞いてみたいと思わせるほどであった。
確かに、千秋楽という特別な日には、どの俳優も力が入る。
しかし岡村ドナの場合、その力の入り方が違う。
それはまるで、
舞台の上で生きているのではなく、日常そのものを生きているかのような迫力だった。
「マネー、マネー、マネー」
この曲の時点ですでに、ドナの怒りは始まっている。
凄味の中に、野心が芽生える瞬間である。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「マンマ・ミーア」
ハリー、ビル、サムの登場に対するドナの動揺は、異常とも言えるほど。
その驚きの表現力には、観客も思わず息を呑む。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「チキチータ」
まるで人生が終わってしまったかのように沈み込むドナ。
極端なまでの落ち込みは、客席にも深い同情を呼び起こした。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「ダンシング・クイーン」
しかし、このナンバーが流れた瞬間――
ドナはかつての「ドナ&ザ・ダイナモス」のメインボーカルへと一変する。
一瞬で舞台の空気が変わる、見事な変身だった。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「スーパー・トゥルーパー」
三人のハーモニーに、観客は完全に酔いしれる。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「ワン・オブ・アス」
ソフィは夢遊病になるし、三人の男は突然現れるし。
混乱の中で呆然とするドナ。
この曲は非常に難しいナンバーだが、岡村は見事に歌い切った。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「SOS」
サムとの対峙は、まさに一騎打ち。
その迫力は、まるで戦いの場面のようであった。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「アワ・ラスト・サマー」
結婚式前の、束の間の安堵。
その静かな幸福感が舞台から伝わってくる。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「スリッピング・スルー」
やはりドナは母親である。
ソフィとの思い出を歌うこの場面では、多くの観客が涙していた。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「ザ・ウィナー」
海外では「11時のナンバー(the 11 o’clock number)」と呼ばれる最大の見せ場
(海外では『マンマ・ミーア!』は夜始まり、11時(23時)頃、この「ザ・ウィナー」が登場する)。
マイクなしでも通るのではないかと思うほどの迫力。
その歌声の凄まじさに、
客席から吹き飛ばされそうなほどの没入感を覚えた。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
「アイ・ドゥ・アイ・ドゥ」
娘の結婚式で、まさかのカミングアウト。
「この中に父親がいる」と明かす場面で、会場は笑いの渦に包まれた。
この感情の急転換も、岡村ドナの真骨頂であった。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
一時期、日本から『マンマ・ミーア!』が姿を消し、寂しい思いをしたファンは多かっただろう。
しかしこの作品は、
4月に横浜、そして広島へと続いていく。
干支で言えば二周を重ねた24年。
劇団四季の『マンマ・ミーア!』が、ウエストエンドやブロードウェイに負けない輝きをこれからも放ち続けてほしいと願うばかりである。
さて、皆様はこの舞台をどのようにお感じになっただろうか。
*上記画像はあくまで筆者のイメージ図です。
2026年2月23日(天皇誕生日)
『マンマ・ミーア!』名古屋公演千秋楽 配役(敬称略)
ドナ・シェリダン
岡村 美南
ソフィ・シェリダン
三平 果歩
ターニャ
恒川 愛
ロージー
久居 史子
サム・カーマイケル
梅津 亮
ハリー・ブライト
鈴木 涼太
ビル・オースティン
脇坂 真人
スカイ
橋 友希
アリ
池永 美穂
リサ
森本 愛莉
エディ
ハンドコ アクアリオ
ペッパー
菊池 俊
男性アンサンブル
丹下 博喜
カイザー タティク
中田 雄太
佐橋 秀明
田口 暉
清水 誠哉
押川 史温
女性アンサンブル
冨重 百音
野村 真莉
西浦 歌織
矢尾 胡春
梨 乃
山中 由貴
倉橋 由衣













