ABBA Voyageプロデューサーのルドヴィグ・アンダーソン氏、世界展開の可能性について言及
ロンドンのクイーン・エリザベス・オリンピックパークに建てられた専用劇場「ABBAアリーナ」（収容人数3,000人）で2022年5月に開幕し、世界的な話題をさらった『ABBA Voyage』。そのプロデューサーであるルドヴィグ・アンダーソン氏が、SXSWロンドンの会場で今後の展開に関する最新情報を語りました。
■ 世界ツアーの可能性は？「今は具体的な計画はなし」
「いくつものエキサイティングな都市と話をしている段階だが、まだ具体的な予定はない」とルドヴィグ氏。
「はっきりとした計画があれば共有したいが、我々は本当に実現させたいと思っている」と述べ、今後の展開に前向きな姿勢を示しました。
ルドヴィグ氏はABBAのメンバーベニーの息子でもあり、SXSWロンドンの「Making ABBA Voyage」パネルにて、BBC Musicのマット・エヴェリット氏や、デジタルABBAの映像を手がけたILM（インダストリアル・ライト＆マジック）のクリエイティブ・ディレクターベン・モリス氏とともに登壇。
■ 「ABBAの家に来たような感覚」
ルドヴィグ氏は、「我々は運が良かった。ABBAの4人全員が生きていて、しかもこのプロジェクトに本気で取り組みたいと思ってくれた」と語ります。
「このアリーナに足を踏み入れれば、まるでABBAの家に来たような感覚を覚えるはずだ。これはブランド再生でも商業プロジェクトでもない。彼ら自身が愛を込めて創り上げた空間なんです」。
「これは1970年代に戻る“タイムカプセル”ではない。これが“今のABBA”であり、彼らが“いま”やりたかったことなんです」と強調。
■ 「ライブバンドは絶対に必要だった」
この約1億4,100万ポンド（約280億円）規模のプロジェクトでは、バーチャルと現実が融合。デジタルABBAのパフォーマンスに、10人編成の生演奏バンドが加わる構成は、初期段階から「絶対必要」とされた要素だとアンデション氏は語ります。
「最初の会議で出た言葉のひとつが、『これは“ライブ”じゃなきゃいけない。ショーであっても、単なるスクリーン映像では意味がない』というものでした」。
■ “何か特別なものが起きる”という魔法
ルドヴィグ氏は、ABBA Voyageに宿る“目に見えない特別な力”にも言及しました。
「取材のたびに『これは何なんですか？』と聞かれます。確かにライブだけど、それ以上の“何か”が起きるんです。それは運のようなもので、私たちに与えられた奇跡だと思います」。
「初めて観客を迎えたとき、バルコニーから見ていたら、1曲目が始まった瞬間に観客が一斉にステージへ駆け寄ったんです。あの瞬間は特別でした。そしてその魔法は、今も毎晩続いているんです」。
■ 他のバーチャル公演とは違う：「形式」を真似しても意味がない
現在、他のアーティストによるバーチャルライブの企画が相次ぐ中で、ルドヴィグ氏は次のように警告します：
「『我々は新しいライブフォーマットを作った』と思うのは危険です。そうではなく、“この作品”を全力で作り上げただけです」。
「他の誰かが似たようなことをやろうとしても、最初から“自分たちは何を作りたいのか”を明確にすることが大切。このショーはABBAのために特別に作られたもので、何かを継ぎはぎしても同じものにはなりません」。
■ ポップハウス、約1,200億円の音楽投資ファンドを運用中
この『ABBA Voyage』を支えているのが、スウェーデン拠点の音楽投資会社Pophouse Entertainment。2024年4月には、12億ユーロ（約1,900億円）超のファンドを立ち上げ、KISS、シンディ・ローパー、アヴィーチー、スウェディッシュ・ハウス・マフィアとの提携も進行中です。
■ ビヨルン・ウルヴァースも登壇：「Voyageはまるで“精神的な体験”」
ABBAのビヨルン・ウルヴァースも同カンファレンスにて「The Future of Entertainment（エンターテインメントの未来）」という基調講演に登壇し、こう語りました：
「Voyageの一番不思議な点は、あれほどまでに“感情的な体験”になることだった。スクリーンを見ていることを、人々がすぐに忘れてしまう。そのことに私たち自身が驚いています」。
さらに、2027年にはKISSのアバターショーも計画中。映画や体験型施設も含めて展開予定で、ビヨルンは「KISSは“マーベル・ユニバース”のようなアバター体験に非常に向いている」とコメント。
「彼らはもともと“漫画のキャラ”のような存在で、デジタルの世界にぴったりなんです」。
