『CHESS』オリジナル・ブロードウェイ版を振り返る

デヴィッド・キャロル、ジュディ・クーン、フィリップ・カスノフが出演し、わずか68公演で幕を閉じた作品

現在、『CHESS』は再びブロードウェイに戻ってきており、史上初となるブロードウェイ再演に向けて準備が進んでいる。
今回のリバイバル版では、若きスター3人――アーロン・トヴェイト、リア・ミシェル、ニコラス・クリストファー――が主演を務める。
そして、その上演劇場は、1988年にオリジナル版が上演されたのと同じインペリアル劇場(Imperial Theatre)だ。

しかし、たった68公演で終わった「ボードゲームのミュージカル」が、どのようにして“カルト的名作”へと変わっていったのだろうか?

*『CHESS』に出演するフィリップ・カスノフ、ジュディ・クーン、そしてデヴィッド・キャロル。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

♟️ 『CHESS』とは

『CHESS』は、冷戦時代の最中に、アメリカとソ連のCHESS王者が互いに戦い、さらに同じ女性をめぐって争う物語である。

この作品はもともと1984年に発売されたコンセプト・アルバムから始まった。
脚本家ティム・ライスは、それ以前から10年近くにわたってアンドリュー・ロイド=ウェバーと共に「キューバ危機を題材にしたミュージカル」を構想していたが、実現には至らなかった。

1980年代初頭、ライスは新しいパートナーとして、世界的ポップグループABBAのベニー・アンダーソンとビヨルン・ウルヴァースに声をかけた。
そのときベニーはこう回想している。

「ティムが“CHESSを題材にしたミュージカルをやりたい”と言ってきたとき、
“そんなの不可能に決まってる。でもやろう!”って言ったんだ」。

💿 コンセプト・アルバムの成功

『CHESS』のコンセプト・アルバムは世界中のチャートを席巻し、
アメリカのビルボード・ホット100で第3位を記録、世界的な批評的成功を収めた。

イレイン・ペイジとバーバラ・ディクソンのデュエット曲「I Know Him So Well」は
イギリスのシングルチャートで1か月間首位を維持し、
One Night in Bangkok」も国際的ヒットとなった。

この人気ぶりから、舞台化は当然成功すると思われていた。

🎭 ロンドン公演(1986年)

1986年にウエストエンド版が開幕したが、評価は賛否両論だった。
アルバムに出演したイレイン・ペイジ、トミー・ケルベリ、マレー・ヘッドが舞台でも同じ役を演じ、
バーバラ・ディクソンの代わりにシヴォーン・マッカーシーが加わった。

当初は『コーラスライン』で知られるマイケル・ベネットが演出予定だったが、
健康上の理由で降板し、『キャッツ』のトレヴァー・ナンが代わりに指揮を執った。

舞台版の脚本はアルバムよりも大幅に拡張され、上演時間は3時間15分にも及んだ。
ロンドンの批評家たちはスコアと舞台美術の壮大さに驚嘆したものの、
脚本の問題点を指摘する声が相次いだ。

🎟️ ブロードウェイ版(1988年)

ブロードウェイ版では、
デヴィッド・キャロル、ジュディ・クーン、フィリップ・カスノフ、マーシア・ミッツマンが主演を務めたが、
批評家の反応はさらに厳しかった。
それでも、音楽や俳優たちの演技は高く評価された。

しかし、わずか17回のプレビューと68回の本公演で幕を閉じ、
『CHESS』は当初のブロードウェイ成功のチャンスを逃したかに見えた。

だが、それはまだ“チェックメイト”ではなかった。

*『CHESS』に出演するニール・ベン=アリとジュディ・クーン。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / 
NYPL Digital Collections)

💿 その後の展開と“カルト的人気”

オリジナルのコンセプト・アルバムや各地のキャスト録音を通じて、
『CHESS』は年を追うごとに熱狂的なファン層を獲得していった。

1990年、1992年、2002年、2008年、2010年、2012年と、
たびたび改訂版や再演が試みられた。

中でも2008年のロンドン公演コンサート版(ジョシュ・グローバン、イディナ・メンゼル、アダム・パスカル、ケリー・エリス出演)は、
アルバムおよびコンサート映像としてリリースされ、話題を呼んだ。

♟️ そして2025年リバイバルへ

今回の2025年版『CHESS』リバイバルでは、
映画『ハンガー・ゲーム:モッキングジェイ』で知られる脚本家ダニー・ストロングによる新しい脚本が採用されている。

このバージョンは2018年、ケネディ・センターで初上演され、
ラウル・エスパーザ、カレン・オリヴォ、ラミン・カリムルー、ルシー・アン・マイルズが出演。
演出は今回のリバイバルと同じくマイケル・メイヤーが務めた。

ティム・ライスは2022年の『CHESS』チャリティコンサート後にこう語っている。

「この作品は決して消えることがない。
1984年のアルバム以来、世界中で大小数百もの上演が続いてきた。
もしかすると今こそ、ブロードウェイに帰ってくる時なのかもしれない」。

🛍️ おまけ:『CHESS』を愛するあなたへ

オリジナル版の写真を見ながら、『CHESS』の歴史を振り返ってみよう。
さらに、Playbill公式ストアでは、ブロードウェイ作品のステッカーも販売中!
過去・現在の人気リバイバル作品(『CHESS』を含む)をテーマにしたものも多数。

現在上演中の全作品のステッカーがセットになったパックも販売中。
単品で10枚以上購入すると、ステッカー2枚が無料でついてくる!
👉 PlaybillStore.com

*『CHESS』の出演者たち(カンパニー・オブ・CHESS)。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』の出演者たち(カンパニー・オブ・CHESS)。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するデヴィッド・キャロルとジュディ・クーン。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するフィリップ・カスノフ。
(注:後半の文字列 “LV EeTatal-S\nice) o-YA hh Aad Om D)fe] t=] m@xe)| (rel ie) ats)” は判読不能なノイズまたは印字エラーと思われます)。

*『CHESS』に出演するジュディ・クーンとデヴィッド・キャロル。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するニール・ベン=アリとジュディ・クーン。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するデヴィッド・キャロル。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』の出演者たち(カンパニー・オブ・CHESS)。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するジュディ・クーンとフィリップ・カスノフ。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するジュディ・クーン。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するフィリップ・カスノフ、ジュディ・クーン、そしてデヴィッド・キャロル。
(注:「IVETG ERSTES TAN 4ER Kefel -teitelit」は判読不能なノイズまたは印字エラーと思われます)。

*『CHESS』に出演するジュディ・クーンとマーシア・ミッツマン。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するハリー・ゴーズとデニス・パルラート。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するフィリップ・カスノフとデヴィッド・キャロル。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

*『CHESS』に出演するハリー・ゴーズ、デヴィッド・キャロル、そしてマーシア・ミッツマン。
(注:「IVETG ERSTES YAN DEE Kefell-teitelit」は判読不能なノイズまたは印字エラーと思われます)。

*『CHESS』に出演するエリック・ジョンソン、ジュディ・クーン、デヴィッド・キャロル、そしてリチャード・ミューエンツ。
(注:「IVETGGE SZENE Tec Ketell-Teifelit」は判読不能なノイズまたは印字エラーと思われます)。

*『CHESS』に出演するジュディ・クーンとハリー・ゴーズ。
写真:マーサ・スウォープ/ニューヨーク公共図書館デジタル・コレクション(Martha Swope / NYPL Digital Collections)

https://playbill.com/article/look-back-on-the-original-broadway-production-of-chess

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です