「勝者がすべてを手に入れる(The Winner Takes It All)」――そう言わせてほしい。心を晴れやかにする大ヒットミュージカル『マンマ・ミーア!』は、まさに私にとっての“勝者”だった。
シンプルでありながら効果的なセットの巧みな使い方によって、昨夜メイフラワー・シアター(※)の観客たちは、美しいギリシャのカロカイリ島へと引き込まれた。そこで繰り広げられるのは、愛、友情、そして自分探しの物語である。
ソフィ・シェリダンは、これまで知らなかった父親を探すための旅に出る。そして結婚式前日、母ドナの過去に登場する3人の男性たちと対面することになる。
*『マンマ・ミーア!』インターナショナル・ツアー キャスト 2024/2025
『マンマ・ミーア!』はサウサンプトンのこの劇場で11月8日まで上演中。
この感動的なミュージカルは観客を魅了し、終演時には全員がABBAの名曲に合わせて心から踊り出した。スタンディングオベーションは当然の結果であり、その拍手はまさにこの舞台が受けるにふさわしい賛辞だった。
ソフィ役 リディア・ハントの輝き
ソフィを演じるリディア・ハントは、終始観客を惹きつけて離さなかった。
彼女が歌う「アイ・ハヴ・ア・ドリーム(I Have a Dream)」の天使のような歌声は、ステージ全体を包み込み、そして母ドナとのデュエット「スリッピング・スルー(Slipping Through My Fingers)」では涙を誘った。
ドナ役 ジェン・グリフィンの圧倒的存在感
そして忘れてはならないのがドナを演じるジェン・グリフィン。
彼女のキャラクターは映画版のドナを見事に再現しており、サラ・アーンショウ(ターニャ役)とロージー・グロソップ(ロージー役)との温かい友情、そしてサム役のルーク・ヤスタルとの深い絆が舞台上で生き生きと描かれていた。
特に「ザ・ウィナー(The Winner Takes It All)」では、魂を揺さぶるような熱唱で舞台を完全に自分のものとした。
コメディセンスと観客の笑い
物語の随所に巧みにユーモアが織り込まれ、ドナの親友や元恋人たちによる機知に富んだセリフのやり取りに、客席は幾度も笑いに包まれた。
*『マンマ・ミーア!』インターナショナル・ツアー キャスト 2024/2025
(写真:ブリンクホフ&メーゲンブルク)
脇を固める名演技
探検家ビル役のマーク・ゴールドソープ、そしてハリー役のリチャード・ミークも、ソフィの父親である可能性に直面する姿を完璧に演じきった。
なかでも筆者のお気に入りの場面は、ビルとロージーが恋の始まりをめぐって繰り広げる「テイク・ア・チャンス(Take a Chance on Me)」。
ロージーが椅子の上を這い回りながらビルを追いかける“鬼ごっこ”のようなシーンは爆笑の渦を巻き起こし、観客も筆者も完全に心を奪われた。
まとめ ― 舞台芸術としての完成度
魅力的な舞台美術、見事な衣装、そして何よりも自然体で情熱的な演技。
この壮大なミュージカルは、すべての要素が完璧に調和していた。
キャスト一人ひとりが、「舞台に立つために生まれてきた」ことを証明するかのように輝いていた。
※メイフラワー・シアター(Mayflower Theatre)とは、
イギリス南部ハンプシャー州サウサンプトン(Southampton)にある、
地域を代表する大規模劇場です👇
🎭 概要
- 正式名称:Mayflower Theatre
- 所在地:Commercial Road, Southampton, England
- 収容人数:約2,300席
(ロンドン外では最大級の劇場のひとつ) - 開館:1928年
- 元の名称:Empire Theatre(エンパイア・シアター)
- 現在の運営形態:非営利のトラスト法人(慈善団体)によって運営
🕰 歴史
1928年に映画館兼劇場としてオープンし、戦後は映画上映やバラエティショー、オペラ、バレエ、ミュージカルなど、
幅広い演目を上演してきました。1980年代に「Mayflower Theatre」と改名し、大規模な改修を経て現在の姿になりました。
🌟 上演作品
メイフラワー・シアターは、ロンドン・ウェストエンドやブロードウェイのヒット作品のツアー公演地として知られています。
これまでに上演された主な作品には、
- 『マンマ・ミーア!』
- 『レ・ミゼラブル』
- 『ライオン・キング』
- 『ウィキッド』
- 『オペラ座の怪人』
などがあり、世界レベルのミュージカルが定期的に上演されます。
🎟 特徴
- サウサンプトンの文化的中心地として、年間50万人以上の観客を集めています。
- オーケストラピットを備え、オペラやコンサート、パントマイムにも対応。
- 内装は1920年代のアールデコ調の雰囲気を残しつつ、最新の照明・音響設備を完備。


