ウェリー:「誰かがお金を払ってくれるなら、ちゃんとしたショーを見せたい」

デビュー・アルバムのリリースをきっかけに急速に注目を集めているウェリーは、「音楽をもう一度楽しいものにしたい」と意気込む、鋭い感性を持った新星だ。

「このバンドが好きかどうか確認するために、わざわざライブに行く必要なんてある?ABBAを聴けばいいじゃん?」と、ウェリーは冗談めかして言う。だが、今夜ロンドン東部の会場「Colours」で演奏するバンドは、まさに彼自身のもの。その言葉をファンが本気にしていないことを願うばかりだ。開演前、近くのパブで話すウェリーは、ライブ音楽の現状について辛辣に語る。「観客は5人の演奏者がこうやってるのを見るだけだよ」と、彼はやる気のないギターのストロークを真似しながら言う。「まるで1960年代の子どもがオーケストラを見てるみたい。ラフマニノフがピアノを弾いてるのを眺めてるようなもんさ」。

ポストパンクに傾倒して育ったサウサンプトン出身の彼は、ライブに行ってガッカリすることに「愕然とした」という。「新聞配達で稼いだ小銭を、こんなつまらない演奏に使ってしまったなんて信じられなかった」と当時を振り返る。「もし誰かがチケットに8ポンド、ビールに8ポンド、バス代に5ポンド払ってくれてるなら、ちゃんとしたショーを見せたいんだ」。

それはまさに、彼自身のバンドが体現している“使命”だ。その日のステージでも、トニー・クリスティの「アマリロ(Amarillo)」の「シャ・ラ・ラ~♪」が鳴り響く中、登場したバンドを歓迎するように観客のビールが空を舞い、モッシュピットが一気に広がった。『Deere John』や『The Roundabout Racehorse』の演奏では、PE(体育)のユニフォーム姿で登場したウェリーが、ジャーヴィス・コッカーとジェームズ・エイキャスターの中間のような雰囲気で観客を魅了。キーボードのハンナによる「トライアングル・ソロ」や、ギタリストのジョーによる情熱的な「馬の鳴き真似」も、すべてチケット代に含まれていると、嬉しそうに語る。

バンドのステージでの自然なパフォーマンスは、これまでに積み重ねたライブの成果でもある。マネージメントがつく前から、自ら100本以上の公演をブッキングして回ってきた彼らは、今もなお、ジョーのホンダ・ジャズで全国を駆け回り、音楽という“商品”を売り込んでいる。

ちなみに、ファストフード店に立ち寄る機会も多く、ウェリーのお気に入りはグレッグス(イギリスのベーカリーチェーン)のジャムドーナツ。「ソーセージロールよりフルーツが多いし、見た目もカラフルだしね」と語るこのスイーツは、まるで彼自身の音楽のように、ちょっとした驚きと楽しさを提供してくれる。

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