ABBAのアグネタは、実際にはダニエル・オドネルのバック・ボーカルを歌っていなかった――アイルランドの著作隣接権管理団体、不正確なデータと控除をめぐり法廷で対立
10年前、アイルランドの実演家側の権利管理団体RAAPは、レコード会社側の権利管理団体PPIを提訴しました。実演家に支払われるべき報酬から、PPIが不適切に金額を差し引いていると主張したのです。EUの裁判所での審理を経て、この紛争は現在、アイルランド高等法院で争われており、双方が相手側のデータの不正確さを指摘しています。
アイルランドの権利管理団体PPIとRAAPによる10年に及ぶ法廷闘争が、先週、ようやくアイルランド高等法院での審理に入りました。双方はそれぞれの主張の要点を示すとともに、相手側のデータ管理がずさんだと非難しました。こうした問題は、権利を一括して許諾する仕組みにおいて、常に支障となります。
一方のデータシステムでは、ザ・チーフタンズ、ザ・ブームタウン・ラッツ、ザ・ソー・ドクターズといった著名なアイルランドのアーティストを識別できなかったとされています。その一方で、もう一方のシステムでは、ダニエル・オドネルが2011年に録音した「ザ・ボーイズ・フロム・キリーベグス」のバック・ボーカルとして、ABBAのアグネタ・フォルツコグが登録されていました。何とも愉快なデータの誤りですが、もし実際に実現していたなら、それ以上に楽しいスタジオでの共演になっていたことでしょう。
レコード業界の権利管理団体は、録音された音楽が放送されたり、公の場で再生されたりする際に、利用許諾を行ない、使用料を徴収します。著作権法上、こうした利用については、権利者と実演家の双方に報酬を受け取る権利があり、通常、実演家は権利管理団体を通じて、その金額の50%を受け取ります。この実演家向けの報酬は、一般に「実演家の衡平な報酬」、あるいは「実演家ER」と呼ばれています。
英国では、PPLという単一の権利管理団体が、権利者と実演家の双方を代表しています。しかし、アイルランドのように、二つの団体が存在する国もあります。一つは権利者を代表する団体で、従来のレコード会社に加え、自主リリースを行なうアーティストも含まれます。もう一つは、セッション・ミュージシャンを含む、すべての実演家を代表する団体です。アイルランドでは、権利者をPPIが、実演家をRAAPが代表しています。
この二つのアイルランドの団体は、徴収した使用料のうち、どれだけを実演家に配分すべきか、また、その支払いをどのように管理すべきかをめぐって、長年対立してきました。この紛争は、すでに10年以上続いています。
先週、ダブリンの法廷では、両団体の代理人が、実演家への支払いを妨げるデータ上の問題を相手側が生み出していると、それぞれ非難しました。『アイリッシュ・インディペンデント』によると、RAAP側の弁護士アンドリュー・フィッツパトリックは、2016年にPPIが、アイルランドの実演家向け報酬の分配を英国のPPLに委託することで、依頼人であるRAAPを迂回しようとした経緯を説明しました。
その結果、PPLのデータベースがアーティストとその出演録音を正しく照合できず、ザ・チーフタンズ、ザ・ブームタウン・ラッツ、ザ・ソー・ドクターズ、「さらにはジョー・ドーランやダニエル・オドネルまでも含む、一部のアイルランドのアーティストへの報酬が支払われなかった」と主張しました。
これに対して、PPI側の弁護士ポール・ギャラガーは、PPLのデータベースが、これらの著名なアイルランドのアーティストを認識できなかったとする主張は「明らかに誤っている」と反論しました。そのうえで、実際に「著しく、明白な誤り」が含まれていたのはRAAPのデータベースの方だと述べました。さらに、こうしたデータベースの問題こそ、PPIが実演家への支払いについてPPLとの協力を始めることにした理由の一つだったと説明しました。
ギャラガーは、その「著しく、明白な誤り」の具体例として、ABBAに関する二つの事例を法廷で挙げました。一つは、あるABBAの楽曲について、RAAPのデータベースでビヨルン・ウルヴァースが実演家として完全に抜け落ちていたというものです。もう一つは、同じデータベースの別の箇所で、前述のダニエル・オドネルの2011年の録音に、ABBAのアグネタ・フォルツコグがバック・ボーカルとして登録されていたというものでした。
録音物の権利者と実演家に、それぞれ別の権利管理団体がある国では、通常、利用許諾は両者が連携して行ないます。そのため、利用者は、すべての対象録音物を利用するために、一つの許諾を得るだけで済みます。
その仕組みには、権利者側の団体が放送事業者や、公の場で音楽を流す事業者に利用許諾を行ない、その後、実演家側の団体と使用料を分ける方式があります。あるいは、別の組織が実際の利用許諾を行ない、徴収した使用料を権利者側と実演家側の団体に分配する方式もあります。
アイルランドでは、従来、PPIが使用料を徴収し、その後、実演家の取り分をRAAPに渡していました。先週の冒頭陳述でフィッツパトリックは、2002年から2012年にかけて、PPIは徴収額の50%をRAAPに支払い、RAAPが実演家にその取り分を分配していたと述べました。
しかし、2013年から状況が変わり始めました。PPIが各種の控除を適用するようになり、RAAPが受け取る金額が徴収額の50%を下回るようになったのです。その中には、「水増しされた」管理手数料や、「ダビング」の対価として放送収入から差し引かれる15%の控除が含まれていました。ここでいうダビングとは、放送事業者が放送前に録音物を複製することを指します。厳密には、実演家ERが発生するのは放送に対してであり、放送前の複製に対してではありません。
さらに、アイルランド国外の実演家の録音物がアイルランドで放送されたり、公の場で再生されたりした場合、どのような条件で報酬を支払うべきかという争いもありました。この問題から派生したEUの裁判所での訴訟は、大きな注目を集め、音楽業界全体では、元の紛争以上に関心を集めることになりました。また、これは、2016年に最初に提起されたRAAPの訴訟が、本格的な審理に至るまで、これほど長い時間を要した理由の一つでもあります。
「RAAP判決」として知られるようになったEUの判決は、アイルランドでの紛争に関しては、基本的に実演家側の団体に有利なものでした。しかし、同時に、この判決は欧州全体で議論を呼ぶ法的先例を生み出しました。EU域内のほかの国々では、さまざまなレコード会社側・実演家側の団体が、この先例を事実上覆すため、欧州の著作権法を改正するようEUの立法機関に求めています。
一方、ダブリンの法廷でフィッツパトリックは先週、PPIが2012年以降、こうした追加の複雑な仕組みや控除を導入したことで、二つの権利管理団体間の「取り決めを一方的に変更しようとした」と述べました。
さらに、PPIは、これらの控除はRAAPとの2002年の契約で認められていたものの、最初の10年間は「運用上の理由」により、より単純な折半方式を採用していたと主張している、と説明しました。
フィッツパトリックは、この主張は到底信用できるものではないと法廷で述べました。また、RAAPが訴訟を起こした後の2016年に、PPIがPPLと提携することを決めたのは、アイルランドの実演家が自らの権利管理団体を選ぶ権利を、レコード会社側の団体が「踏みにじる」行為だったと主張しました。
そしてRAAPの立場からすれば、会員たちは、PPIと同じく大手レコード会社を主要会員とするPPLに、自分たちのER報酬を管理・分配する役割を任せたくはなかったのです。
RAAP対PPIの裁判は今週も続き、審理は全体で8週間に及ぶ見込みです。

