ミュージカル『マンマ・ミーア!』が、ロマンスとコメディー、そしてABBAのヒット曲をアーツケープに届ける
*ドナ・シェリダン役のアムラ=フェイ・ライト。(画像提供)
劇場を出た直後に、そのまま振り返って、もう一度中へ戻りたいと思わせてくれる作品には、何か特別なものがあります。
現在アーツケープで上演されている、長年愛され続けてきたミュージカル『マンマ・ミーア!』の最新南アフリカ公演を観た後、私はまさにそのような気持ちになりました。
この南アフリカ版には、ABBA、ロマンス、コメディー、ギリシャの島を舞台にした物語、そして家族と友情という、誰もが期待する要素がすべてそろっています。しかし、それらが舞台上で一つになる様子を実際に観ることこそ、この作品を素晴らしい夜の娯楽にしているのです。
あまりにも楽しくて信じられず、夜の半分を隣に座っている人の顔を見ながら過ごしてしまう――そんな作品です。特に素晴らしいナンバーでは友人を肘でつつき、一緒に笑い、互いに感動していることに気づきます。そして劇場を出る前から、すでに「みんな、この作品を観に来るべきだ」と話していることでしょう。
そしてもちろん、きっと座席に座ったまま踊りだしてしまうはずです。
カロカイリ島への小旅行
キャサリン・ジョンソンが脚本を手がけた『マンマ・ミーア!』は、架空のギリシャの島カロカイリで結婚式の準備を進めるソフィ・シェリダンの物語です。
母親の古い日記を見つけたソフィは、ドナの過去に関わる3人の男性を島へ招待します。そのうちの誰が自分の父親なのかを突き止めようとするのです。
*ミシェル・ユンカー、リア・マリ、ジョーダン・ロジャース。(画像提供)
『マンマ・ミーア!』を以前に観たことがある人なら、この物語が生み出そうとしている感覚をすでに知っているでしょう。
太陽の光にあふれ、ロマンチックで、少し混乱していて、ABBAの音楽に満ちています。映画版とミュージカル版が長年にわたって愛され続けてきた理由でもある、日常から抜け出させてくれるような世界です。
今回の公演は、その感覚を見事に表現しています。
舞台装置は、ひと目でギリシャの島だと分かる景観をステージ上に作り出しています。照明も物語に合わせて変化し、穏やかで親密な場面から、より大規模で華やかなミュージカルナンバーへと移り変わります。
衣装と振付が楽しさをさらに引き立て、それらの舞台デザインが一体となることで、自分がアーツケープの客席に座っていることを、驚くほど簡単に忘れさせてくれます。
そして、もちろん音楽があります。
「ダンシング・クイーン」「ヴーレ・ヴー」「ノウイング・ミー、ノウイング・ユー」「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」などの楽曲が物語の中に織り込まれていることは、この公演を大いに楽しめる理由の一つです。特に観客が曲のイントロに気づき、小さな声で一緒に歌い始める瞬間は格別です。
『マンマ・ミーア!』のファンにとっては、最高の意味で親しみを感じられる作品です。
今回の公演は、映画でおなじみの世界を単純に再現しているわけではありません。その精神を捉え、観客が劇場の座席からその世界を体験できる機会を与えてくれるのです。
すべてを一つにまとめ上げる出演者たち
2026年版では、アムラ=フェイ・ライトがドナ・シェリダンを演じ、サマンサ・ペオがターニャ、リンディ・アブロモウィッツ・サックスがロージーを演じています。
*画像提供。
ライトは、ブロードウェイの『シカゴ』でヴェルマ・ケリー役を23年間務めた、輝かしい国際的経歴を携えてこの役に臨んでいます。
ライトと南アフリカ版『シカゴ』で共演した経験を持つペオ、そしてアブロモウィッツ・サックスが加わり、3人で「ドナ&ザ・ダイナモス」を結成します。
3人の息の合った演技は、今回の公演の見どころの一つです。特に、3人の友人たちが、ユーモアと個性を存分に発揮しながらドナの複雑な過去に向き合う場面は印象的です。
リア・マリがソフィ役を務め、ポール・デュ・トワ、ティアン・ラウテンバッハ、マット・ニューマンが、それぞれサム、ビル、ハリーを演じています。
*ティアン・ラウテンバッハ、ポール・デュ・トワ、マット・ニューマン。(画像提供)
ジョック・クラインハンスがスカイ役、アドリアーノ・カルロスとダニエル・コンラディがペッパー役とエディ役をそれぞれ務め、ジョーダン・ロジャースとミシェル・ユンカーがアリ役とリサ役を演じています。
アンサンブルは、大規模なミュージカルナンバーにあふれるほどのエネルギーをもたらしています。振付は出演者たちがステージ全体を使って表現できるように構成され、作品の勢いを途切れさせません。
出演者、音楽、舞台デザインのすべてが、「観客に心から楽しい時間を過ごしてもらう」という一つの目的に向かって力を合わせていると感じられる公演です。
喜びを与え続ける贈り物
ショータイム・マネジメントのヘイゼル・フェルドマンは、『マンマ・ミーア!』を「喜びを与え続ける贈り物」と表現しています。実際に今回の公演を観れば、その言葉に込められた思いを容易に理解できます。
この作品をこれほど楽しいものにしているのは、何か一つの要素だけではありません。
ABBAの楽曲、色鮮やかな衣装、照明、舞台装置、振付、そして作品を心から楽しむ方法をよく理解している出演者たち――そのすべてが組み合わさっているのです。
劇場を出ると、この作品について誰かに話したくなります。
「ほかにすることがなければ、観に行ってもいいかもしれない」という程度のものではありません。『マンマ・ミーア!』が大好きな友人、ABBAの歌詞をすべて知っている友人、そして、なぜかいまだに映画版を観たことがない友人の顔が、すぐに思い浮かぶような作品です。
その夜の雰囲気を決め、その余韻が翌日までついてくるようなショーです。曲や面白かった場面、そして思いがけず心を揺さぶられた場面について、いつまでも考え続けてしまいます。
おそらく、それこそが、この作品を劇場で過ごす素晴らしい一夜にしている理由でしょう。
客席に座っている間だけ楽しむのではありません。劇場を出た後、ほかの人にも同じ体験をしてもらいたいと思わせてくれるのです。
ミュージカル『マンマ・ミーア!』は、アーツケープ・オペラハウス(※)で10月11日まで上演されます。その後、10月16日から11月22日まで、ヨハネスブルグのモンテカジノ内にあるテアトロ(※)で上演されます。
※アーツケープ・オペラハウスとは?
アーツケープ・オペラハウスは、南アフリカ共和国ケープタウンの中心部にある総合舞台芸術施設「アーツケープ・シアター・センター」のメインホールです。オペラだけでなく、ミュージカル、バレエ、演劇、コンサートなど、大規模な舞台公演に使用されています。
歴史
施設は1971年5月19日、「ニコ・マラン・シアター・センター」として開館しました。当初は、ケープ舞台芸術評議会がオーケストラ、オペラ、バレエ、演劇の4部門を運営する制作拠点でした。
南アフリカの社会変革を受け、2001年3月に現在の「アーツケープ」へ改称。現在は、文化的背景を問わず幅広い人々に舞台芸術を届ける施設として活動しています。アーツケープ公式・沿革
オペラハウスの特徴
客席数は約1,487席で、アーツケープにある複数の劇場の中で最大です。緩やかに傾斜した1階席とバルコニー席を備え、大人数の出演者による本格的な作品を上演できる広い舞台、オーケストラピット、照明・音響設備を有しています。
客席は舞台を包み込むように配置され、木目を生かした壁と暖色系の照明が、落ち着きのある雰囲気を作り出しています。車椅子利用者向けの座席や設備も設けられています。アーツケープ公式サイト、車椅子利用案内
『マンマ・ミーア!』との関係
今回の南アフリカ版『マンマ・ミーア!』は、このオペラハウスで上演されています。約1,500人を収容できる大劇場のため、「ダンシング・クイーン」や「ヴーレ・ヴー」などの華やかな群舞、色彩豊かな衣装、大がかりなギリシャの島の舞台装置を存分に楽しめる会場です。
所在地は、ケープタウン中心部のフォアショア地区。ケープタウンを代表する舞台芸術の殿堂の一つです。
※モンテカジノの「テアトロ」とは?
「テアトロ・アット・モンテカジノ」は、南アフリカ共和国ヨハネスブルグ北部のフォーウェイズにある大型劇場です。カジノ、ホテル、レストラン、映画館などが集まる複合娯楽施設「モンテカジノ」の一角にあります。
開館と『ライオン・キング』
テアトロは2007年5月、大規模ミュージカルを上演できる本格的な劇場として開館しました。
こけら落とし公演は、レボ・Mとピーター・トーリエンが共同製作したミュージカル『ライオン・キング』でした。同公演は36週間にわたって上演され、55万人以上を動員。南アフリカの興行記録を塗り替える大成功を収めました。モンテカジノ公式サイト
劇場の特徴
約1,900席を備えた、南アフリカ最大級の劇場です。客席は1階席と複数階のバルコニー席で構成され、舞台を包み込むような曲線状に配置されています。
赤を基調とした客席と壁面、ボックス席、広いステージを備えた華やかな内装が特徴です。大規模ミュージカルのために音響設計されていますが、ダンス、演劇、コメディー、ポップス、ジャズ、国際的なショーなどにも対応できます。設計会社エイダスによる劇場紹介
モンテカジノとは
モンテカジノは、イタリアのトスカーナ地方の街並みをイメージした、ヨハネスブルグを代表する大型エンターテインメント施設です。カジノだけでなく、劇場、映画館、ホテル、レストラン、ショップ、鳥類園などが集まっています。モンテカジノ公式案内
なお、施設内には「ピーター・トーリエン・シアター&スタジオ」という別の小規模劇場もあります。今回『マンマ・ミーア!』が上演されるのは、そちらではなく大型劇場の「テアトロ」です。
『マンマ・ミーア!』公演
南アフリカ版ミュージカル『マンマ・ミーア!』は、アーツケープ・オペラハウスでのケープタウン公演を終えた後、2026年10月16日から11月22日までテアトロで上演されます。
「ダンシング・クイーン」「マンマ・ミーア」「スーパー・トゥルーパー」「テイク・ア・チャンス」など、ABBAの名曲を大劇場ならではのスケールで楽しめる公演です。『マンマ・ミーア!』公式公演案内




