【連載㉕】熊本地震取材日誌(2016年の今日、熊本で何があったのか?)

5月8日日曜日昼

【熊本地震・震災・ライフライン&交通情報】

皆様こんにちは。昨晩被災地より帰京しました。被災地では前回同様24時間ずうっと揺れている感じがしました。まるで船酔いした気分です。避難所の衛生は芳しくなくノロウイルス、インフルエンザ、食中毒が起こりうる陰湿な環境でした。せめて化粧室だけでも徹底した消毒が必要と感じました。アパートの抽選が始まりましたがハズレた被災者のショック度は見ていられませんでした。ライフラインは水以外復旧し、交通も明日の学校再開に目指して懸命に作業しているようでした。ほとんど自宅に被害が無かった方、お金に余裕のある方はそうでない被災者に来れば比べ楽観的な感じでしたが、全壊・半壊・お金の余裕がない被災者は「死にたい」「死にたい」と連呼していました。同じ避難所に居ても「格差」が明確になり、どんな慰めの言葉も通じませんでした。国は今回の熊本地震を甘くみているようです。悔しい想いをしながら帰京しました。

1.被災地情報

①震度1以上の地震の回数1300超え!

一連の熊本地震では、震度1以上の地震の回数が1300回を超えるなど、活発な地震活動が続いています。

被災地では本日8日も気温が25度以上の夏日になっているところがありますが、夕方からは雨が降り始める見込みで、気象庁は、引き続き、激しい揺れを伴う地震に警戒するとともに、熱中症や土砂災害に注意するよう呼びかけています。

一連の熊本地震では熊本県と大分県で震度1以上を観測した地震の回数が、4月15日~17日までの3日間はいずれも100回を超え今日もも午前11時までに震度2や1の揺れが16回発生しました。

依然として、活発な地震活動が続き、4月14日以降の地震の回数はあわせて1317回に達しています。

震度別では、

・最大震度7が2回

・震度6強が2回

・震度6弱が3回

・震度5強が4回

・震度5弱が7回

・震度4が86回などとなっています。

『気象庁』は、熊本県や大分県では、今後も当分の間、最大で震度6弱程度の激しい揺れを伴う地震に警戒するよう呼びかけています。

②避難所集約!被災者が本日8日に移動!

一連の地震で5000人を超える被災者が避難所生活を続けている熊本市で、学校の再開を前に分散している避難所を18の拠点避難所に集約するため避難している人たちの多くが避難所を替えることになり、本日8日から移動が始まりました。

熊本市内では本日8日午前9時のまとめで学校の体育館や教室を含めた市内161か所の避難所で5236人が生活しています。

熊本市は10日に学校を再開させるのを前に18の拠点避難所に避難している人たちを集約させることを決め本日8日から本格的な移動が始まりました。

このうち、中央区の出水小学校の避難所では避難している人たちがボランティアなどに手伝ってもらいながら両手に大きな荷物を持って市が用意したバスに乗り込んでいました。

そして拠点避難所のひとつ、中央区の熊本市総合体育館には午前10時頃からバスなどが次々と到着し、受付で登録をした後避難している人たちがあらかじめ決められたスペースに案内されていきました。

この拠点避難所は新たにおよそ200人を受け入れる準備を整え、段ボールで仕切られ、床に敷くマットも用意されています。

50代の女性は「仕切りがあってプライバシーも以前よりは確保されていて安心できます」と話していました。

また70代の男性は「自宅から遠くなってしまうけれどもいつまでもいるとこどもたちの邪魔になってしまうと思い移動してきた」と話していました。

熊本市によりますと、避難している人たちの移動は本日8日いっぱい続くということです。

③アーケード壊れ立ち入り禁止も!被災商店街、復興に濃淡!

熊本県などでの一連の地震では、熊本市の商店街にも被害が及んでいます。元の姿を取り戻しつつあるところもありますが、復興まで時間がかかりそうなところも。店主からは不安の声も漏れています。

市中心部から約4キロ東にある「健軍(けんぐん)商店街」。昨日7日午前、お年寄りたちが買い物に訪れていました。フルーツ店のパート店員津留文(つるあや)さん(59)は「客足は1週間ほど前から徐々に戻りつつある。ただ商店街の復興にはだいぶかかるだろう」と話していました。

約280メートルのアーケードに靴屋や帽子屋、八百屋など約60店舗が並んでいます。開店しているのは6割ほどです。16日の本震で、ほぼ中央部にあるスーパー「サンリブ」が倒壊。アーケードの一部も壊れて一帯は立ち入り禁止となりました。

商店街振興組合によりますと、この商店街は1953年の「白川大水害」の被害を受けた人たちが市の東部に移り住み、人口が増えたことで店が増えていきました。今は、近所に住む高齢者らが主な客層とのことです。

立ち入り禁止になった区域では地震前、10店舗ほどが営業していました。中村好孝さん(48)は市中心部で約10年、営んでいた居酒屋をたたみ、約7カ月前に移転してきたばかりでした。

店が入る建物は崩れていませんが「アーケード倒壊の恐れあり」として応急危険度判定で「危険」と判定されました。本震以降、店内に入れていません。地震保険には入っていなかったそうです。「少しでも早く再開したいが、開けられるのは半年先か、1年先か。せっかくついたお客さんも離れてしまう」と頭を抱えています。

➃熊本の土木復旧工事、国が代行へ!大規模災害法を適用!

熊本県を中心にした一連の地震について、政府は『大規模災害復興法』に基づく「非常災害」に指定する方針を固めました。被災した自治体が管理する道路や漁港などの復旧を、国や都道府県が代行できるようになります。近く政令を閣議決定するとのこと。東日本大震災を受け、2013年に施行された同法の初めての適用となります。

一連の地震では、同県益城町などで庁舎が被災し、行政機能が著しく低下しました。県も被災市町村の支援や仮設住宅の整備など、被災者対応に追われています。国は指定により、道路などの復旧事業を肩代わりし、復旧・復興を加速させる予定です。

県は、土砂災害で崩落した同県南阿蘇村の阿蘇大橋や俵山トンネルの復旧工事について、国による代行を要望しています。阿蘇大橋は県管理の国道325号に架かり、県が再建主体。俵山トンネルも県道にあります。いずれも村と熊本市方面とを結ぶ重要道路ですが、技術的に難工事が予想され、二次災害の恐れもあり、県だけでは対応が難しのが実情でした。

指定後、国は速やかに職員を派遣し、復旧計画の作成や建設業者への発注業務を担うとのことです。

東日本大震災でも自治体が甚大な被害を受けたが、国による業務代行は特別法の制定に手間取った結果、震災から1カ月余り後の11年4月末まで始められませんでした。大規模災害復興法はその反省から制定されました。

政府はすでに一連の地震を激甚災害に指定しています。公共土木事業の場合、通常の災害復旧なら69%の国庫補助率を83%まで上げ、残り大半を交付税で支援することで、自治体の実質的な負担率は0.8%程度になります。

⑤熊本県、国からの物資受け入れ終了へ!県内調達に転換!

一連の熊本地震で熊本県の蒲島郁夫知事は、国から送られてくる大量の食料などの救援物資の受け入れを地震から1カ月をめどに終了する方針を固めました。避難生活の長期化で避難者の需要が多様化していることや、県内での調達を優先することで地元経済の回復にもつながると判断したようです。明日9日に安倍晋三首相に面会して伝えます。

熊本県はこれまで、国が自治体の要請を待たずに物資を送り込む「プッシュ型支援」による「180万食」の食料をはじめ、生活用品、毛布、段ボールベッド、仮設トイレなど、避難所で使う様々な物資の支援を国から受けています。

県は震災当初の混乱期には国による大量の支援物資が避難者の安心感につながったと見ています。現在の避難者数はピーク時の1割以下の1万4千人余りとなり、物資不足はほぼ解消されました。一方で、避難生活が長期化するにつれて、アレルギー食品を避けたり、生理用ショーツを必要としたりするなど、避難者の要望が多様化しています。

⑥南阿蘇、引き裂かれたまま!橋崩落、迂回に1時間!

熊本県を中心にした一連の地震で、同県と県内市町村が管理する道路や橋などの公共土木施設の被害額が、県の中間集計で1700億円を超える見通しとなりました。復旧には巨額の費用と技術的課題の克服が必要で、全くめどが立たないものも多いようです。なかでも、4月16日未明の「本震」で阿蘇大橋が崩落した南阿蘇村の被害は深刻で、村が東西に分断される危機に陥っています。

「本震」から3週間の昨日7日。崩落した阿蘇大橋の西側にある立野地区周辺は、大破した家屋の角材や衣類、テレビや炊飯器、本などが泥にまみれて散乱し、人影はまばらでした。

後片付けに戻った3人のお年寄りが、道端で話し込んでいました。70代男性は「水がこんけん、どぎゃんもならん」。別の男性は「立野は消滅やな」と漏らしていました。

住民約860人の立野地区は地震と土砂崩れで多くの建物が倒壊し、3人が亡くなりました。村中心部の東側とつなぐ阿蘇大橋が崩落し、国道57号やJR豊肥線、南阿蘇鉄道も途絶。車で10分ほどだった東側へは約1時間の遠い道のりになってしまいました。

新たな土砂災害の危険もあり、住民の多くは西隣の大津町の体育館に避難しています。村は、立野地区住民向けの仮設住宅を大津町内に設ける方向で調整中です。橋を通って小学校に通っていた児童38人のうち23人が村外の学校に通学します。

自宅の中2階がつぶれた80代男性は、大津町に建設予定の仮設住宅に入るつもりです。「梅雨はこれから。土砂崩れが怖くて戻りたいとは思えない」。立野が生まれ故郷といい「今のままだと立野はおそらくなくなってしまう。さびしさや悲しさを通り越した気持ちだ」と下を向いていました。

東西の分断で救急搬送も困難を伴う。同村一関の特別養護老人ホーム「水生苑」(入所者50人)は地震前、橋を渡って車で15分ほどの阿蘇立野病院などに搬送する態勢をとっていました。今、入所者の容体が急変したら山中の迂回路を通り1時間かけて南隣の山都町内の病院に運ぶそうです。入所者は平均年齢約88歳。山部ひとみ施設長は「いつ何があってもおかしくない」と心配しています。通勤が難しくなり、退職を決めた正規職員もいるようです。

主要産業の観光への打撃も大きいです。道の駅「あそ望の郷くぎの」支配人の山部武志さん(53)は「迂回路の山道を越えないと来られず、雨だと観光客は極端に少なくなる」と話しています。大型連休中の売り上げは、例年の3分の1~5分の1ほどに落ち込みました。

熊本県によると、県管理分と市町村管理分を合わせた4月26日現在の土木施設の被害は3443カ所、被害額は1709億6千万円。橋梁(377カ所)の被害額が498億円と最も大きかったようです。

⑦ソフトバンクのサファテ投手、熊本の子どもたちを招待!

福岡ソフトバンクホークスの守護神サファテ投手が昨日7日、ヤフオクドーム(福岡市)での楽天イーグルス戦に地震で被災した熊本の子どもたちを招待しました。

被災地の教会などが子どもたちを励まそうと、クリスチャンのサファテ投手と意気投合。一行はバス2台で球場を訪れ、試合前の練習から見学しました。

「熱男」と書かれたタオルにサインをしてもらった熊本市の吉村好太くん(10)は、握手もしてもらい「手がとっても大きかった」と感激していました。

⑧南阿蘇の水力発電所、地震で壊れる!集落へ大量の水流出!

熊本地震の本震で、熊本県南阿蘇村の水力発電所「黒川第一発電所」が壊れ、大量の水が集落に向け流れ出ていたことが明らかになりました。因果関係は不明ですが、現場では土砂崩れが起き、2人の住民が亡くなりました。発電所を持つ九州電力は週明けから調査に取りかかり、外部専門家を交えて水の流出と土砂崩れの関連を調べる予定です。

発電所は同村立野の山の斜面にあります。九電の担当者が昨日7日、村役場などを訪れ、週明けから土砂の採取など調査の準備に入ることを報告し、了承を得ました。

黒川の水を貯水槽まで引き、約250メートル下の発電設備までの落差を使い発電する黒川第一。九電によると4月14日の「前震」後に設備を点検した時は、異常はなかったそうです。しかし本震後の16日未明、貯水槽の水位が低下。朝になって上空から確認したところ、貯水槽の外壁や水路が壊れ、水が流れ出てましたい。作業員が黒川から取水を止めた午前9時半ごろまでに流出した水は約1万立方メートル(25メートルプールで約20杯分)にのぼるとのことです。

現場では土砂崩れが発生。ふもとの新所(しんしょ)地区で家が押しつぶされ、片島信夫さん(69)と妻の利栄子さん(61)が亡くなりました。

通商産業省(現経済産業省)は、1965年に水力発電所の耐震性など技術基準を省令で定めました。黒川第一の貯水槽は、それ以前につくられたため適用外だそうです。九電は斜面の崩落は貯水槽より上から発生しているとして「水の流出と斜面の崩落の因果関係は不明」(広報)と話しています。

*黒川第一発電所:1914年に完成した水力発電所。黒川から取水し、貯水槽から発電所までの約250メートルの落差を利用して発電しています。最大出力4万2200キロワットで、約1万4千世帯分の電気を供給できます。

⑨熊本 11の高齢者施設が使用不能に! 約400人退去!

一連の地震で建物に被害が出るなどして、熊本県内の11の高齢者施設が使用できなくなり、合わせて400人近くの入所者が退去してほかの施設などに移っていることが、熊本県と熊本市の調査で分かりました。

⑩“家に入れない” 地震怖がる子どもに絵本!

熊本地震のあと、子どもが地震を怖がって家に入れないといった相談が寄せられたことから熊本市は子どもや保護者向けの絵本を作りました。

2.断水・給水

「断水約5600世帯」

『熊本県内』では、本日8日午前11時の時点で4つの町と村のおよそ5600世帯で断水が続いています。

『益城町』のおよそ28%にあたる3186世帯

『南阿蘇村』の1350世帯

『西原村』のおよそ31%にあたる811世帯

『御船町』の276世帯

県内では、4つの町と村の5623世帯で断水が続いています。

「本日5月8日の給水場所」

『熊本市』の臨時の給水所です。

・熊本市上下水道局

・熊本新港船着き場

『熊本市以外』の臨時の給水所です。

『菊陽町』

・西部支所キャロッピア

『益城町』

・益城町役場

・広安小学校

・広安西小学校

・ひろやす荘

・総合体育館

・いこいの里

・保健福祉センター

・中央小学校

・グランメッセ

『御船町』

・玉来郵便局

*午前10時~10時30分と午後16時~16時30分

・ 玉虫団地

・西部分館

*午前9時45分~9時55分と午後15時45分~15時55分

・中野消防倉庫

*午前8時30分~8時50分と午後14時30分~14時50分

・ 座女木入口

*午前9時から9時20分と午後3時から3時20分。

・ 下山バス停

*午前9時30分~9時40分と午後15時30分~15時40分

『西原村』

・山西小学校

・ 河原小学校

・西原中学校

・高遊地区

『宇城市』

・小川ラポート

『美里町』

・美里町役場中央庁舎

『阿蘇市』

・ 中通公民館

・乙姫公民館

・永草公民館

・阿蘇西小学校

『南小国町』

・自然休養村管理センター

『南阿蘇村』

・南阿蘇中学校体育館

・村営住宅室町団地

・下田区消防詰所前

・東下田中組防火用水前

・長野公民館下

・旧立野小学校

3.医療

「本日8日の医療機関の診療状況」

『熊本市内』

・杉村病院

*通常通り外来診療を受付

・熊本地域医療センター

*9日朝まで

*小児科・内科・外科の夜間・休日診療

*紹介状は不要

・大腸肛門病センター高野病院

*午前中のみ外来診療受付

*軽症の場合のみ、救急外来受付

『救急外来のみ受付』

・熊本赤十字病院

・国立病院機構熊本医療センター

・済生会熊本病院

・熊本大学医学部附属病院

・東病院

・熊本中央病院

・くまもと森都総合病院

・熊本機能病院

・朝日野総合病院

・熊本市民病院と南部中央病院は軽症の場合のみ対応

・川野病院

・江南病院

*人工透析の必要な患者は受け入れていません。

・くわみず病院

・熊本整形外科病院

・福田病院と表参道吉田病院はかかりつけの方のみ対応

『熊本市以外の自治体にある医療機関』

以下の医療機関は『救急外来のみ』受付

『宇城市』

・宇城総合病院

・済生会みすみ病院

『八代市』

・熊本総合病院

・熊本労災病院

『菊池市』

・川口病院

『玉名市』

・玉名中央病院

『山鹿市』

・市民医療センター

『阿蘇町』

・阿蘇医療センター

・阿蘇温泉病院

『山都町』

・矢部広域病院

『氷川町』

・八代郡医師会立病院

『人吉市』

・人吉医療センター

『水俣市』

・水俣市立総合医療センター

『上天草市』

・上天草総合病院

『天草市』

・天草中央総合病院

「気温上昇!熱中症や食中毒に注意」

本日8日の『熊本県内』は午前中から気温が上がり、すでに25度以上の夏日になるところもあり、熊本県は熱中症や食中毒に注意するよう呼びかけています。

『熊本地方気象台』によりますと、県内は、気圧の谷の影響で曇っていますが、ところによっては晴れ間がのぞき午前中から各地で気温が上がっています。

午前11時半の気温は、菊池市で25度6分、山鹿市で25度5分、熊本市で25度4分などとなっています。

午後からは湿った空気が流れ込む影響で雨が降るところもあり、1時間に降る雨の量は多いところで20ミリと予想されています。

熊本県は、屋外で作業したり避難所や車の中などで過ごしたりする際に、こまめな水分補給や冷たいタオルで体を冷やすなど、熱中症への対策を呼びかけています。

また、避難所で出された食事は、早めに食べたり、炊き出しをするときは火をよく通したりするなど、食中毒にも注意してほしいとしています。

「昼からの暑さや雨にも注意」

前述の通り『熊本県』や『大分県』では午前中から気温が上がり、すでに255度以上の夏日となっているところがあります。

このあとも気温が上がる見込みで、日中の最高気温は『大分県日田市』で28度、『熊本市』で26度などと予想されています。

また、湿った空気が流れ込む影響で、熊本県では夕方から、大分県では今夜から、雨が降り始める見込みです。

9日昼までの24時間に降る雨の量は、いずれも多いところで50ミリと予想され、その後も、10日にかけて雨の降りやすい天気が続く見込みです。

気象庁は、屋外での作業や避難所で過ごす際には、こまめに水分をとるなど熱中症に注意するとともに、揺れが大きかった地域では土砂災害にも注意するよう呼びかけています。

「立野病院診療できず」

『熊本県南阿蘇村』の立野地区にある「阿蘇立野病院」は80あまりの病床がある病院で、救急患者も受け入れる地域の中核の病院でした。しかし一連の地震で病院周辺の道路に大きな被害が出たほか、裏山で土砂崩れのおそれがあることから、病院は入院患者およそ70人を別の医療機関に移し、建物は閉鎖されています。病院の現地再建のメドは立っていないということです。病院に立ち寄った男性職員は「地域の医療拠点として、患者さんのことを考えると申し訳ない気持ちですが、やむをえない状況です」と話していました。

「食中毒に注意」

一昨日6日、熊本市の小学校で避難している人たちが腹痛などの症状を訴えた問題をうけて、市は、避難所で出された食事は早めに食べたり、炊き出しをするときは火をよく通したりするよう注意を呼びかけています。

6日午後、地震の避難所になっている、熊本市立城東小学校で避難している人たちなどが次々と腹痛や吐き気を訴え、23人が病院に搬送されました。

『熊本市』によりますと、症状を訴えた人たちは、避難所で出された昼食を全員が食べていて、メニューは『おにぎり』と『野菜炒め』『レタス』と『トマト』、『リンゴ』と『スイカ』だったということです。

『熊本市保健所』は集団食中毒の可能性が高いと見て、原因となった食材の特定を急いでいます。

昨日7日の県内は、一部の地域で気温が25度を超える夏日になっているほか、あす予想される最高気温は熊本地方と球磨地方で27度などとなっています。

熊本市は、避難所で出された食事は早めに食べたり、炊き出しをするときは火をよく通したりするよう注意を呼びかけています。

4.住宅

「関西の公営住宅の無償提供」

『大阪府』

・堺市などにある府営住宅300戸を用意する方針で、うち90戸はすぐに入居が可能。入居期間は原則1年以内ですが、延長にも柔軟に対応。

*問い合わせ:大阪府住宅経営室支援チーム

*電話:06-6210-9779

・大阪市、市営住宅50戸がすぐに入居可能。期間は1年以内。

*問い合わせ:大阪市住宅部管理課

*電話:06-6208-9264~9266

『兵庫県』

・兵庫県は『神戸市』や『明石市』など18の市や町にある県営住宅100戸を提供。入居期間は、当面、最長2年まで延長可能。

*問い合わせ:兵庫県住宅管理課

*電話:078-230-8470

・神戸市も市営住宅の50戸を、先着順に提供。入居期間は1年以内。

*問い合わせ:神戸市住宅管理課

*電話:078-322-5585

『京都府』

・京都府は、府営住宅30戸を提供。受け入れ期間は6カ月以内で、1年以内の延長もが可能。今後さらに受け入れ戸数を増やすことも検討。

*問い合わせ:京都府住宅課

*電話:075-414-5366

・京都市も、市営住宅を提供。すぐに入居できるのは30戸。入居期間は6ヶ月以内で、1年以内の延長が可能。

*問い合わせ:京都市「被災者向け住宅情報センター」

*電話:075-223-0750

『滋賀県』

・滋賀県は、『大津市』や『栗東市』の県営住宅のうち25戸を無償で提供。入居期間は6ヶ月間で1年以内の延長が可能。

*問い合わせ:滋賀県住宅課

*電話:077-528-4234

・大津市も、市営住宅を無償で提供。入居期間は6ヶ月間、その後も延長可能。

* 問い合わせ:大津市住宅課管理係

*電話:077-528-2786

『和歌山県』

・和歌山県では、県内の公営住宅45戸を提供。入居期間は県営住宅が原則1年以内、市や町の公営住宅は住宅により半年から1年以内ですが延長も可能。

*問い合わせ: (県営住宅)和歌山県建築住宅課

*電話:073-441-3212

*(公営住宅)和歌山県建築住宅課企画指導班

*電話:073-441-3214

・和歌山市も、市営住宅10戸を無償で提供。入居期間は6ヶ月間が基本ですが、必要に応じて延長可能。

*問い合わせ:和歌山市住宅第1課

*電話:073-435-1098

『奈良県』

・奈良県は、県営住宅や市営住宅、86戸を無償で提供。このうち、54戸はすぐに入居可能。入居期間は原則1年以内ですが、被災状況に応じて柔軟に対応。

*問い合わせ:奈良県住まいまちづくり課

*電話:0742-27-7544

※これらのの公営住宅については、いずれも家賃は必要ありませんが、『光熱費などの負担は必要』です。また「り災証明書」が間に合わなくても受け付けます。そのほかの入居の条件などについてはそれぞれの自治体に電話で相談してください。問い合わせは、平日の日中に受け付けています。

5.住まい

「『みなし仮設』の相談電話相次ぐ」

一連の地震で、熊本県などは、被災者の住宅を確保しようと仮設住宅の建設とあわせて民間の賃貸住宅の賃料を行政が負担する「みなし仮設」を活用することにしていて、県と協定を結んでいる不動産団体では4月25日から電話相談窓口を開設し「みなし仮設」についての相談に応じています。

窓口では、団体に加盟する不動産会社の社員らが、申請には全壊や大規模半壊のり災証明が必要なことを説明したり、家族構成や希望する物件の間取り、それに地域について聞き取ったりしていました。

相談電話はきのうまでに1900件ほど寄せられているということで、団体では、被災者の希望に応えられそうな物件を扱う不動産業者を紹介するなどしています。

・民間賃貸住宅の無料相談窓口

*電話:0120-03-0338

*受付時間:午前10時~午後17時まで

6.交通

「交通機関への影響(本日8日午前11時)」

『熊本県内』の交通機関への影響です。

『在来線』

JRは豊肥線が熊本県の肥後大津と大分県の豊後荻との間で、土砂崩れのため当面、列車の運転ができないということです。

JRでは、学校の授業が再開するのにあわせて9日から平日の朝と夕方に限って一部の区間で通学バスを運行し、代行バスとあわせて使えば、不通区間をバスで行き来できるようにします。

『三セク鉄道』

また、南阿蘇鉄道も土砂崩れのため全線で列車が運転できなくなっていて、復旧の見通しはたっておらず、かなりの時間がかかる見通しです。

『高速道路』

このほか、九州自動車道は、すでに全線で通行できるようになっていますが、道路の一部が損傷している影響で車線が規制されるなどしています。

7.ボランティア

「ボランティア活動の呼びかけ強化へ」

一連の地震で大きな被害を受けた熊本県『益城町』には本日8日も多くのボランティアが訪れています。

地元の社会福祉協議会では、大型連休が終わり、今後、参加できる人が減ると予想されることから、原則として県内に限っていた募集を明日日からは全国に広げて参加を呼びかけることにしています。

『益城町』にあるボランティアセンターでは、午前9時の受け付けを前に、休みを利用して訪れたおよそ300人が列を作りました。参加した人たちは、作業の内容とともに熱中症に注意して作業にあたるよう担当者から説明を受けたあと、現場へと向かいました。このうち益城町宮園の住宅では8人のボランティアが庭に落ちている瓦をトラックに積み込んでいました。

3回目の参加という北九州市の40代の男性は「継続が大事なのでこれからもニーズがある限りはボランティアに参加したい」と話していました。

『益城町社会福祉協議会』の國元秀利事務局長は「生活の立て直しに向けてボランティアのニーズは高まってきているが、大型連休が終わって参加できる人が減る可能性があるので、呼びかけを強めていきたい」と話しています。

社会福祉協議会によりますと、連休中は多い時で700人以上のボランティアが集まりましたが、昨日7日は半分ほどになったということで、原則として県内に限っていた募集を明日9日からは全国に広げて参加を呼びかけることにしています。

「県内の災害ボランティアの募集状況」

県内の各市町村のボランティアの募集についてお伝えします。

受け付け時間は日によって変わる場合があるほか、定員に達するなどして受付が中止になることもあります。事前に各センターの問い合わせ先やホームページなどでご確認の上、お越しください。

『災害ボランティアセンターの情報』

『熊本市』

*熊本市中央区 花畑広場

*午前9時受付開始

*電話:090-6653-1552、090-6653-1648、090-6653-1649

『益城町』

* 益城町安永 井関熊本製造所グラウンド

*9時受付開始

*本日8日までは熊本県内の方に限定して受入

*明日9日以降は県外の方も参加可能

*電話:096-289-6090

『南阿蘇村』

*南阿蘇村久石久木野総合福祉センター

*午前9時受付開始(受入は熊本県内の方限定)

*電話:0967-67-2511、0967-67-2512

『西原村』

* 西原村鳥子東京カソード研究所跡地

*午前8時30分受付開始

*電話:096-279-4425

『合志市』

*保健福祉センターふれあい館 合志市社会福祉協議会

*事前にボランティアの登録が必要

*募集は、市内に在住または勤務している方限定

*電話:090-8348-2699

『菊池市』

*事前にボランティアの登録が必要

*今後の受け入れは『菊池市内の方限定』

*電話:090-8348-3147、090-8348-2821

『宇土市』

*宇土市旭町 宇土市民体育館

*当面は『熊本県内の方を優先的』に受入

*電話:0964-23-3756

『宇城市』

*宇城市松橋町豊福 県自動車運転免許センター跡地 県博物館ネットワークセンター多目的広場

*受入は『九州在住の方限定』

*電話:090-6653-1573、090-6653-1442、 090-8348-2529

『阿蘇市』

*必要に応じてホームページやツイッターで募集予定

*電話:0967-32-1127

『山都町』

*山都町社会福祉協議会

*当面の受け入れは『山都町内の方限定』

*電話:0967-82-3345

『大津町』

*大津町森 大津町運動公園

*当面の受け入れは『九州在住の方限定』

*電話:090-8348-2570、090-8348-2784

『菊陽町』

*菊陽町久保田 菊陽町中央公民館前

*受付は本日8日まで

*14日15日も、ボランティアの受付を行う予定

*電話:090-8348-2787

『嘉島町』

*嘉島町上島 嘉島町福祉センター

*当面の受け入れは『熊本県内の方限定』

*天候によりボランティアの受付が中止になる際は、前日の夕方に嘉島町のホームページに掲載

*電話:090-6653-1384、090-8348-2409

『甲佐町』

* 甲佐町岩下 老人いこいの家

*受付は『熊本県に在住』、もしくは『勤務の方に限定』

*電話:096-235-1022、090-6653-1354、090-6653-1464

『御船町』

* 御船町木倉 町民グラウンド南側駐車場

*電話:070-3160-2396、070-3152-3656

8.支援

「家に入れない子ども向け絵本」

熊本地震の後、発達障害の子どもが地震の恐怖で家に入れないといった相談が寄せられたことから、熊本市は子どもや保護者向けの絵本を作成しました。

この絵本「やっぱりおうちがいいな」は発達障害の子どもを持つ親から「子どもが家に入れないため車中泊を続けている」などの相談が寄せられたことから熊本市のこども発達支援センターが作りました。

絵本は地震の恐怖で家に入れない男の子が親が落ちてきそうな物を片づけた上で地震が起きたらテーブルの下に隠れるよう教えることで家に入れるようになるストーリーです。

発達障害児の支援にあたっている職員たちが物語を考え、絵も描きました。

お気に入りのおもちゃを身近に置くことや地震が起きたらどうすればいいか見通しを伝えるとともにこどもに安心感を与えるなど対処法も記されています。

熊本市子ども発達支援センターの木村重美所長は「きょう家に入れなくても子どもを叱らず、安心できる環境を作って気持ちが落ち着くのを待って欲しい」と話しています。

この絵本はセンターのホームページからダウンロードすることができます。

http://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5…

9.り災証明書

「市町村被災者台帳システム利用」

熊本県は、被災者の生活再建が迅速に進むよう、り災証明書の発行や支援金の給付の情報などをコンピューターで一元的に管理する「被災者台帳システム」の利用を県内の市町村に呼びかけ、これまでに『熊本市』や『南阿蘇村』など15の市町村が利用することがわかりました。

「被災者台帳システム」は、住宅の被害状況の調査に基づくり災証明書の発行のほか、生活再建のための支援金の給付や住民税の減免などの情報をコンピューターで一元的に管理するもので、自治体の部局ごとに管理している被災者の避難先や支援制度の利用状況などの情報を1つのシステムで確認できるようになります。

熊本県は、被災者の生活再建を迅速に進めるため「被災者台帳システム」を開発した新潟大学や民間企業などでつくる支援チームからシステムの提供を受け、被災した県内の自治体に積極的な利用を呼びかけてきました。県によりますと、これまでに45の市町村のうち、熊本市や南阿蘇村など15の市町村がこのシステムを使ってまずはり災証明書を発行することを決めたということです。このうち熊本市は、「システムを使うことで、少しでも早くり災証明書を発行するとともに関係する部局と情報を共有してそれぞれの被災者に応じたきめ細かい支援につなげたい」と話しています。

5月8日日曜日<特別企画>

~東北震災を忘れない・ノンフィクション短編小説~

『忘己利他(もうこりた)』~瀬戸内寂聴さん東北震災を語る~

*これは2011年春「3・11」直後、瀬戸内寂聴さんに寄稿していただいた記事です

*文章は『オール寂聴さんの言葉』で構成してあります。

今日はまた本当に良いお天気。窓をあけましょうか。その方が気持ちがいいでしょう。ほら、ここではもうしだれ桜の上の方で、花が開いていますよ。門の入口にあるのは蜂須賀桜といって、とっても早く咲くの。私は三十七年前に出家しました。仏縁で岩手県の極北の天台寺の住職になり、寺の復興に二十年余り力を尽くしたので、その時から三陸の土地には何度も法話で行っています。あの豊かな海沿いの町は、どこも静かで、美しかったですよ。そこで出会う東北の人たちも無口だけれど、とても情の厚い人ばかりでね。美味しいウニやお魚をどんどん送ってくれて、それは嬉しかった。そうした町のほとんどが、津波で消えてしまった。ひどいものです。夜、暖かい布団で寝て、お風呂に入って、温かいものを食べる。そういう生活をしながら、いったい被災者たちにどんな慰めの言葉が言えるでしょう。だから私は、この地震と津波があってから、しばらくはマスコミから求められても、何も発言しないでいました。たまたま私は、昨年秋から脚がきかなくなって療養中だったのです。ところが、日を追うにつれ、災害のひどさに、これは放っておけないと思うようになりました。いま東北では毎日、行方不明者が増えて、死者も千単位で増え続けていますよね。大きな大きな、風景を壊すような堤防を人間は造りました。でも津波は山のように高くて、その堤防を乗り越えてきたんですね。人間は知識に頼って隨然に挑戦するものを造るけれど人間の知識の限界を越え、底のない自然の力は軽々とそれを乗り越えてくる。大自然の脅威に対して、知識は限界があるんですね。福島の原発の問題など、知識を過信して「安全」だと言い続けてきて、それがとんでもない危機を招いている「人災」です。が襲ってきたことが恐ろしい。だって、原発は我々人間が造ったものですから。子供を持つ親は切実です。

それにしても、あのような自然の威力の前で、人間はいかに無力なのでしょう。家族は手を握っていても、その手を離さざるを得なかったでしょう。離して生き残った人は、それはつらいでしょう。目の前で家が潰れたり、肉親を失ったりする悲しみや絶望は、体験していない者には決して分かりません。それでも・・・と私は思うんです。その哀しみや狼狽やつらさも、いつまでも続かない。この世のことはすべて生々流転、移り変わるのです。 私は今年の正月で数えの九十歳ですから、もラ卒寿です。九十年間生きてきて、いろんな目に遭ってきましたし、いろんなことを見てきました。子供の頃から日本が戦争をしていたので、物心付いたときから「非常時」という言葉を耳にタコができるくらい聞かされてきました。私たちにとって、「非常時」が日常でした。厳しい時代だったけれど、それでも嫌なことより楽しい思い出の方が記憶に残っているのは、私が子供だったかでしょう。大人になってさらに戦争がやってきた。私は中国の北京で終戦を迎えました。 恐怖と心細さの中で命からがら日本へ引き揚げると、日本は焼け野原。郷里の徳島も空襲で、母親は防空壕で焼け死んでいました。どん底とは、まさにこのことだと思いました。だけど、そのつらさを忘れないで、人間はやっぱり生きていくしかないんです。「無常」という言葉があります。仏教で「無常」と言えば、人間が死ぬことを意味するでしょ。でも、私はそれだけじゃないと思っています。「無常」とは読んで字の通り、常ならずということ。同じ状態が人生で続くことはあり得ない。九十年間を生きてきてつくづく思います。人生には良いことも悪いことも連れだってやってくるんですね。そして良いことばかりが続くことはなく、同じように悪い状態が永久に続くこともないんです。どん底の場所に落ちても、人は無常を思い、忍辱(辛抱する)を貫き通すしか術がないんです。家を失い、肉親が死に、一人ぼっちになった人たちの哀しみは計り知れません。でも、いま以上に不幸になることはあり得ない。もうこれ以上の困難は起こらないのだと、私たちは上向きになるしかないのです。そのことを信じる。どんなに雨が降り続いても、必ずやってくる晴れの日をじっと待つのです。必ずそれは終わります。あるとき気付けば、暗い運命にも光は射し始めるんですよ。

被災しなかった私たちにはいったい今、何ができるのでしょう。私はこの場所で自分が被災していないことに、申し訳ないような気持ちを抱いています。何だか、すまないし、恥ずかしいような気持ちがどうしても湧いてきてしまうのです。きっと、被災地のニュースをテレビや新聞を通じて見ている人たちの多くも、そのような思いを抱えているのではないでしょうか。でもね、私たちに何ができるだろう、と考える人はいい人ですよ。それを考えない人もいますからね。ああ、助かってよかった、自分じゃなくてよかったと思う人だっているのですから。避難所では一個のおにぎりを家族みんなで分け合っている、という話がありました。その光景を想像することから、私たちは自分のできることを考えるしかないんです。三度三度のご飯を食べることができ、ちゃんとお風呂にも入って、暖かいお布団で寝る。それがどれほど有難ぐ、もったいないことであったか。当たり前の便利さが、どれほど危ういものであったかを感じるだけでも違うと思いますよ。考えて、何もできなくたって、ほんのわずかな義援金なら出すことができるじゃないですか。例えば、早く寝て電気を消そうとすることもできるじゃないですか。 日々の生活を振り返ってみれば、私たちはたくさんの無駄をしているでしょう。食べ物だって、いっぱいいっぱい残しているし、捨てている。そんなことを一つ一つ、これはやめよう、これは贅沢のし過ぎだと思うだけでも違う。そうやって、これまでの生き方を見直すんですよ。私はいま、とってももどかしいんです。まだ脚がきかず、思うように出歩けないでいるんです。これまでは何かがあると、まずは行かなきやダメだと思って、すぐに被災地の現場に飛んで行ったんですけれど。被災者の方々に直接会って、話をして、自分のお金を送り届けましてね。仏教では「忘己利他」と言って、自分のことはさておいて他人を幸せにするように務めることが、お坊さんの務めです。こういう非常の事態のとき、とにかく何かをしなくては、できることは何でもいいからしなくては、と行動するのは出家者の義務なんです。それにどんな世の中になっても、私はこれが人生かと思って死んでいけばいいけれど、やっぱりあとに残る人がかわいそうです。だから、死んでいく者の義務としても、残される人のために少しでも良いものを残してあげたいと思うんです。だから、四月になって脚が少し良くなったら、もう治ったことにして活動を始めるつもりです。まずは四月八日の花祭りに人が集まるから、バザーを開いて、義援金を集めます。それに私のお金を足して届けたいです。

被災地で暮らす方々は、その日を生きるのに精いっぱいで、今夜の寒さをどうするか、明日の食事をどうしようかと、気持ちを高めて一日を乗り切っているのが現状であることと思います。心の痛みについて考えたり、感じたりしている時間はないことでしょう。 けれどもしばらく経つと、哀しみや沈んだ気持ちがどっとやってくるわけです。気持ちもウツになるでしょう。そのとき私たちは、被災者のことを決して忘れずに、誰か一人でもいい、被災地に暮らしているお友達でもいい、話し相手になったりずっと付き合ったりしていく気持ちでいるべきです。 人生にとっていちばん大事なのは、目に見えないものですよ。心は目に見えないし、神も仏も目に見えません。だけど、その目に見えないものが、人生を本当に左右させているんです。戦後の日本人は、金や物といった目に見えるものばかりを大事にしてきました。外国人がびっくりするほど勤勉に、もとにあったものを取り戻そうとしました。お茶碗一つ取り返したら、。今度はお盆が欲しい。その次は机も欲しい。着るものがあったら、次は飾る宝石が欲しい。その情熱によって、何もなかった日本は世界で有数の経済国になったでしょう。でも、そのとき心はどうだったのでしょう。幸福を守るのはお金ではなく目に見えないものなのに、それをどう扱ってきたか。だからこそ、いま最も疎かにしてはならないのは心です。祈りです。そして知識ではなく、人に優しく振る舞い、困っている人たちを助けようとする智慧です。たとえあらゆる物が消えてしまっても、体が残れば必ず心は残る。心さえ失わなければ、人はなんとかやっていける。私たちはその心を大事にしていかなければなりません。自分のためではなく、誰かのために祈る心。自分以外の人のための祈りは、いつか報われるときがくるからです。

(続く)

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