Q-Music:ホモソニック ― ブロードウェイ、カクテル・ジャズ、そしてミツキ、アーロ・パークス、フリコ、『CHESS ザ・ミュージカル』のポップ・グルーヴ
LGBTQのためのプレイリストに、ブロードウェイのキャスト・レコーディングは欠かせない。そんな一枚としてぴったりなのが、『CHESS ザ・ミュージカル』(ゴーストライト)だろう。
1984年に「制作途中」のスタジオ・レコーディングが発売された当初から『CHESS』を追い続けてきた人なら、そこから思いがけないヒット・シングルが誕生したことを覚えているかもしれない。それが、マレー・ヘッドが歌った「ワン・ナイト・イン・バンコク」だった。
このミュージカルは、ティム・ライスと、ABBAのベニー・アンダーソン、ビヨルン・ウルヴァースによって共同制作された。これは、彼らのジュークボックス・ミュージカル『マンマ・ミーア!』が世界的な現象となる、はるか以前のことだった。
また『CHESS』からは、1988年にオリジナル・ブロードウェイ・キャスト・レコーディングも誕生している。これは、ジュディ・クーンらが出演したものの、残念ながら成功には至らなかったニューヨーク公演のキャストによるものだった。
今回のアルバムは、2026年6月にブロードウェイで幕を閉じた最新リバイバル公演のキャストによるもの。
出演したのは、アーロン・トヴェイト、リア・ミシェル、ニコラス・クリストファー、そして自身がゲイであることを公表している俳優ショーン・アラン・クリルらで、全員の歌声を新しいキャスト・レコーディングで聴くことができる。
アルバムでは、アーロン・トヴェイトが「ワン・ナイト・イン・バンコク」を歌っているほか、「アイ・ノウ・ヒム・ソウ・ウェル」「サムワン・エルシィズ・ストーリー」「ノーバディーズ・サイド」「ヘヴン・ヘルプ・マイ・ハート」といった印象深いナンバーも収録されている。
そして、もう一つ注目すべきなのは、『CHESS』が最初に登場した当時から現在に至るまで、アメリカとロシア/旧ソ連との関係が、それほど大きく変わっていないということだ。
ミツキのコンサートに行く幸運に恵まれたことはあるだろうか?
もしあるなら、彼女に非常に多くのLGBTQファンがいることに気づいたかもしれない。ミツキは、ツアーの一つで、ボーイジーニアスのメンバーとしても知られるクィアのシンガー・ソングライター、ルーシー・ダカスをオープニング・アクトに迎えたこともある。
「自分を特定のラベルで括られたくない」という世代に属するミツキは、何よりもその音楽自体が彼女を物語るアーティストだ。
ミツキの最新アルバム『ナッシングズ・アバウト・トゥ・ハプン・トゥ・ミー』(デッド・オーシャンズ)には、2022年のアルバム『ローレル・ヘル』に収録されていた「ジ・オンリー・ハートブレイカー」や「ステイ・ソフト」のようなダンスフロア向けのアンセムはない。
しかし、期待通り、そこには新しく刺激的な音楽的方向性がいくつも示されている。
「アイル・チェンジ・フォー・ユー」ではカクテル・ジャズ、「キャッツ」では喉を鳴らすような響きとカントリー風の音色、「インステッド・オブ・ホープ」と「ルールズ」ではヴィンテージ・カントリーを思わせるオルガン、そして「ウェアズ・マイ・フォン?」では不安感を帯びたロックを聴かせてくれる。
もし本当にダンスしたくなる音楽を探しているのなら、ロサンゼルスを拠点に活動する英国出身のクィア・シンガー・ソングライター、アーロ・パークスによる素晴らしいアルバム『アンビギュアス・デザイア』(トランスグレッシヴ)をチェックしてほしい。
そこには、ビートがたっぷりと詰め込まれている。
アーロ・パークスをまだよく知らないという人は、彼女がビヨンセのアルバム『カウボーイ・カーター』に収録された**「ヤ・ヤ」で、作曲者の一人としてクレジットされていることを覚えておくといい。このときは、本名のアナイス・マリーニョ**名義でクレジットされている。
自身のアルバムのライナーノーツで彼女が語っているように、「欲望はエンジン」なのだ。
そしてパークスは、そのエンジンを始動させる。
最初は「ブルー・ディスコ」でしなやかに走り出し、続く「ジェッタ」では私たちをクラブへと連れていく。
曲を重ねるごとにダンスのエネルギーは持続し、「ゲット・ゴー」「ヘヴン」「ナイトスイミング」「センシズ」「ラック・オブ・ライフ」といった楽曲でも、その魅力を存分に感じることができる。
もちろん、私たちには時折ひと休みが必要だということもパークスは心得ている。そのため、「フロエット」や「ビームズ」といった、ビートを前面に押し出さない楽曲へと巧みに導いてくれる。
シカゴを拠点に活動するバンド、フリコのセカンド・アルバムのタイトルは、『サムシング・ワース・ウェイティング・フォー』(ATO)。
このタイトルは、あなたが思っている以上に、このアルバムにふさわしいものかもしれない。
フリコには、they/themの代名詞を使用するクィアのメンバー、ベイリー・ミンゼンバーグが在籍している。もともとデュオだったバンドは4人組へと拡大。そしてこのアルバムには、間違いなく今年最高の楽曲の一つと言える曲が収録されている。
それが「セヴン・ディグリーズ」だ。
ニコ・カペタンがリード・ヴォーカルを担当するこの曲は、ヴィンテージ・ポップの要素を取り入れることによって、聴く人によっては音楽に対する懐かしい感情を呼び起こす力を持っている。
しかも、文句なしに涙を誘う一曲でもある。聴く際には心の準備をしておいた方がいいだろう。
そして、気がつけばこの曲を何度もリピートしていたとしても驚く必要はない。
アルバムには、このほかにも素晴らしい楽曲が数多く収録されている。なかでも、「チュー・チュー」「ホット・エア・バルーン」「ディア・バイシクル」「アリス」などは聴き逃せない。

