ミスター・メットのプライドナイトABBAダンス、低迷するシーズンのメッツファンに束の間の喜びを届ける
「トーキン・ゲイズボール」:チームは低迷し、監督は解任。そんな中、メッツはプライドナイトでどうやってファンに喜びを届けるのか?――その答えはABBAだった。
*先週、シティ・フィールドで笑顔を見せていたのは、ミスター・メットとミセス・メットだけだった。
写真:ウェンデル・クルーズ/USA TODAY Sports
「トーキン・ゲイズボール」へようこそ。
「マネー、マネー、マネー」のように、「千賀滉大に払うお金くらいは、楽しく使われていてほしいものだ……」。
ニューヨーク・メッツは、大谷翔平がMVP級のプレーを次々と生み出すのと同じくらいの勢いで、新たな「最低記録」を更新し続けています。
彼らの珍プレー集(ブルーパー集)でさえ、まるで映画監督ヴェルナー・ヘルツォークが演出したかのような重苦しさがあります。
もし「屈辱を味わうこと」が好みの人を探したいなら、出会い系プロフィールで「#LGM(Let’s Go Mets)」と検索すれば見つかるかもしれません。
そんな冗談はさておき、先週はメッツにとって、普段のメッツ基準ですら特別ひどい一週間でした。
チームは7連敗。
その間、フィリーズには15対3で大敗を喫し、投手陣は1試合で3本塁打を浴びたうえに、サイクルヒットまで許すという散々な内容でした。
さらに続くカブスとのダブルヘッダーも連敗。
第2試合では6失策を記録し、内野手全員が少なくとも1つずつエラーを犯すという惨状でした。
世間に恥をさらすという意味では、それはまるでドラァグレース番組「ル・ポールのドラァグ・レース」で、ヴァレンティナがル・ポールに向かって「マスクを外したくありません」と言った、あの有名な場面の野球版のようでした。
そして、誰も驚かなかったことに、この惨状の締めくくりとして、金曜日に監督カルロス・メンドーサが解任されたのでした。
監督解任の発表後、最下位に沈むメッツのクラブハウスには、お通夜のような重苦しい空気が漂っていました。
しかも、その日はちょうどプライドナイト。
これ以上雰囲気を悪くする方法があるとすれば、ランデン・ラウプまで獲得してしまうくらいしかない――そんな皮肉を言いたくなる状況でした。
それでも、「ハッピー・プライド」を妨げようとするあらゆる要素が揃っていたにもかかわらず、虹色の輝きを放つ希望の光が、その暗い空気を切り裂いたのです。
試合前、フィールドでの中継でSNYのリポーター、スティーブ・ゲルブズは、カルロス・メンドーサ監督解任について、まるで国家元首の追悼演説でも読み上げるかのような厳粛な口調で語っていました。
「チームがここまで落ち込んだ理由を、一つだけ挙げることはできません」
とゲルブズは静かに語ります。
「もし簡単な答えがあるのなら、とっくに解決していたでしょう」。
ところが、その背後では場違いなほど陽気に、ABBAの「ギミー! ギミー! ギミー!」がシティ・フィールドのスピーカーから大音量で流れ始めました。
そしてゲルブズの肩越しに現れたのは、虹色の衣装を身につけたミスター・メット。
両腕を大きく振り上げ、まるでナイトクラブのダンスフロアを支配しようとしているかのように踊り始めます。
ミスター・メットは、この重苦しい空気に付き合う気などありませんでした。
今こそ、ABBAの時間だったのです。
虹色に包まれたこの突然の乱入にもひるまず、ゲルブズは必死に中継を続けます。
厳粛な雰囲気を保とうとしながら、
「この問題にはさまざまな要因があります。しかし一つ言えるのは、メッツはオフシーズンに一度にあまりにも多くの変更を加え過ぎたということです」
と分析を続けました。
しかし、その真面目な解説とは裏腹に、画面には巨大な野球ボールの頭をしたミスター・メットが左右に飛び跳ねながら、スウェーデン・ディスコの極致とも言えるABBAサウンドに合わせて踊り狂う姿が映し出されていました。
それはまるで、ニュースキャスターウォルター・クロンカイトがサイゴン撤退作戦を真剣に報道している最中に、BGMとして「恋のウォータールー」が流れているようなものです。
この中継は、
「野球界が求める深刻さ」
と
「プライドの楽しさ」
との対決になっていました。
そして勝っていたのは、圧倒的にプライドでした。
まるでプライドが、今のメッツを相手に試合をしているかのような一方的な展開でした。
それでもゲルブズは仕事を全うしようとします。
「昨年のチームは崩壊した。だから変革が必要だった――そう考える理由は十分あります。しかし、選手もコーチ陣もほぼ全員入れ替えてしまえば、チームは非常に難しい状況に置かれてしまいます」。
きっと彼は、この先もっと深い分析へと話を進めようとしていたのでしょう。
しかし、その頃にはミスター・メットは、自分の顔の前で大きな手袋を猛烈な勢いで振り回していました。
まるで、
「初めてLSDを体験した野球ボールが、そのまま命を持って踊り始めた」
かのようでした。
そんな映像に対抗できるスポーツ解説など、この世には存在しません。
このシュールな瞬間は、
MLBのプライドナイトが持つ「楽しさ」は、チームの悲惨な成績では決して消せない
ということを、改めて証明してくれました。
たとえ、そのチームがメッツであったとしても。
さらに言えば、
ミスター・メットは、FOXスポーツに「ジョン・スモルツの中継をもっと楽しくする方法」を教えてしまったのかもしれません。
※New York Mets(ニューヨーク・メッツ)は、アメリカ・New York Cityを本拠地とするMajor League Baseball(MLB)のプロ野球チームです。National League東地区に所属し、本拠地はクイーンズ区にあるCiti Fieldです。
球団の歴史
メッツは1962年に創設されました。
1957年にニューヨークを代表する2球団、Brooklyn Dodgersがロサンゼルスへ、New York Giantsがサンフランシスコへ移転したことで、ナショナル・リーグのチームがニューヨークから姿を消しました。その穴を埋めるために誕生したのがニューヨーク・メッツです。
「Mets」はMetropolitans(メトロポリタンズ)の略称で、19世紀に存在したニューヨークの球団名に由来しています。
本拠地・シティ・フィールド
2009年に開場したシティ・フィールドは約4万人を収容する近代的な球場です。
球場内にはニューヨーク名物のグルメやファン向け施設が充実しており、MLBでも人気の高いスタジアムの一つです。
主な実績
- ワールドシリーズ優勝
- 1969年(「ミラクル・メッツ」と呼ばれた快進撃)
- 1986年
- ナショナル・リーグ優勝
- 1969年
- 1973年
- 1986年
- 2000年
- 2015年
歴代の名選手
メッツには数多くのスター選手が在籍してきました。
- Tom Seaver(球団史上最高の投手と評されるレジェンド)
- Mike Piazza
- David Wright
- Keith Hernandez
- Darryl Strawberry
日本人選手との関わり
近年では、日本人選手の活躍でも注目されています。
- Kodai Senga(2023年入団。独特の「おばけフォーク」を武器に活躍)
- Kazuo Matsui
- Tsuyoshi Shinjo(在籍は短期間)
マスコット「ミスター・メット」
メッツの公式マスコットはMr. Metです。
野球ボールを頭にしたユニークなデザインで、1964年に誕生したMLB初期のマスコットキャラクターの一人として知られています。現在は妻のMrs. Metも登場し、試合や地域イベントでファンを楽しませています。
今回の記事では、プライドナイトでABBAの「ギミー! ギミー! ギミー!」が流れる中、虹色の衣装を身に着けたミスター・メットが陽気に踊る姿が話題となりました。チームは連敗と監督解任で沈んでいましたが、その明るいパフォーマンスがファンに笑顔をもたらし、「シティ・フィールドで笑っていたのはミスター・メット夫妻だけだった」という記事タイトルにつながっています。
ヤンキースとのライバル関係
同じニューヨークを本拠地とするNew York Yankeesとは最大のライバル関係にあり、両チームの対戦は「サブウェイ・シリーズ」と呼ばれます。地下鉄で両球場を行き来できることから、この名称が付けられました。
メッツは華やかなスター軍団というよりも、熱心なファンに支えられる「愛される球団」として知られ、苦しいシーズンでもファンが熱い声援を送り続けることで有名です。

